中国内で、例えば外交部と国防部を比較すれば、国防部の方がはるかに強い影響力を持っています。しかし、これは今に始まったことではありません。
問題は、党の指導との関係で軍部の台頭があるのかどうかですが、党の軍支配はいまなお強固なのではないかと考えられます。中国軍の部隊には、指揮官に加え政治将校がいて、党はそれを通じて軍を支配しています。党が鉄砲を支配するという毛沢東以来の伝統と、それを裏付けるための政治将校制度、そして、それに結びついた秘密警察制度は、いまなお強固であると見るべきです。人民解放軍が党の軍隊であって国の軍隊ではないことも、党による支配を確実にするのに役立っていると思われます。
ただ、薄前重慶書記の失脚に見られるような共産党指導部の不祥事が続くと、共産党の正統性や権威が国民レベルで失われ、それが軍にも波及することにはなるでしょう。その時には、ボナパルティズムの危険が出てきます。更にそういう状況で、党も軍も自らの役割を強調するために民族主義に依存する可能性があり、これが危険な対外強硬策につながる恐れがあります。こういう動きの可能性には、目を見開いて警戒していく必要があります。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。