つまり、残念ながらこれからのわが国では、かつてほど豊富な仕事がすべての世代に供給されるような恵まれた状況にはならない可能性が非常に高い。仕事も少なく、給与も低い状況下で、増大する一方の社会保障関連支出を賄おうとすれば、いずれかの世代がその歪の影響を被ることとなってしまうだろう。
より大きなマイナスの影響を被る新卒世代
それにもかかわらず、社会保障等の分野において、旧来の人口、経済が右肩上がりだった時代に適した制度がそのまま維持されているため、世界でも稀に見る世代間格差が発生している。
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実はわが国の雇用慣行も例外ではない。以前と比べれば幾分明るい兆しが見えつつある新卒者の就職戦線の現状であるが、それでもいわゆるリーマン・ショックの直前と比較すると低いままとなっている(図2)。
また、戦後の日本経済史を概観して見ると、日本経済にネガティブなインパクトを与えるイベントが発生した時期には若年者の失業率が高まっていることが確認できる。
例えば、第一次オイルショック時には、全世代の平均失業率が1.9%のときに、新規高卒者を含む15-19歳は3.6%、新規大卒者を含む20-24歳2.9%、第二次オイルショック時には、同じく順に2.2%、5.5%、3.6%、プラザ合意後の円高不況時は、2.8%、7.3%、4.6%、東アジア金融危機・消費税率引き上げ時には4.7%、12.5%、8.4%、ITバブル崩壊時は5.4%、12.8%、9.3%、そしてリーマン・ショック時は5.1%、9.8%、9.1%と、新卒世代の失業率が他の世代よりも大幅に高くなっている。
「景気が悪い時期の就活で運が悪かった」では
すまされない
このように経済が停滞すると、その後数年間失業率が高い期間が継続するが、より大きなマイナスの影響を被るのは、その時期に就職を迎える新卒者である。
しかし、「就職活動の時期がたまたま景気の悪い時期と重なって運が悪かった」という簡単な話ではない。なぜなら、これまでのわが国の場合、新卒で正社員として採用されなかった場合、その後も非正規の仕事しか得られない可能性が非常に高くなる。いわゆる新卒一括採用主義の弊害であるが、この点については、次回詳しく触れる。