シルバー民主主義に泣く若者

2012年7月26日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所研究部長

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。*記事はすべて筆者の個人的見解であって、筆者の所属組織とは無関係です。

アンフェアな若者批判

 また、例えば、仕事が見つからず困っている学生に対して、社会、大半は企業や組織でそれなりの地位にあったりすでに退職している世代から「会社の規模や、仕事を選びさえしなければ仕事はたくさんある。最近の若者は仕事の選り好みしているだけだ。」という批判が浴びせられることがある。実際に、世代間格差について取り上げたあるテレビ番組に出演した時に、ある中央省庁の政務三役を務める政治家から発せられた言葉でもある。しかし、こうした発言は実は幾つかの点でフェアとは言えない。

 まず、最近の学生は会社や仕事を選り好みするということに対しては、そもそも自分の好みや学歴に見合った就職先を選ぶのは悪いことだろうか。そういう発言をする者だって就職の時点で自分の希望を優先したはずだ。現在のわが国の雇用慣行では、首尾よく正社員として就職できた者は、よっぽどのことがない限り解雇される恐れがないという意味で、安定した「身分」が保証される。

 つまり、一旦正社員になりさえすれば、内部はともかく外部との競争にさらされることのない立場である。自らが「選り好んだ」ポストは離さず、他人に選り好みするなというのは傲慢のそしりを免れないであろう。そのような批判をするのであれば、いつでも失職し、就職活動をしなければならなくなる可能性がある同じ土俵に立ってから行うべきだ。イス取りゲームでイスに座ったまま他人にイスを探せというのがルール違反であるのと同じ理屈だ。

「753問題」は最近の傾向ではない

 また、中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が入社後3年に以内に離職する傾向があることが知られている。いわゆる「753問題」である。

 実はこの割合は、長期的にほぼ横ばいで安定しており、現在の若者に限った傾向ではない。ただ最近では、こうした傾向を指して、「最近の若者は堪え性が足りない」と若者を批判するのに使われたり、若者の職業観の欠如と理解しキャリア教育の推進のために使われることもある。しかし、苦労して得た仕事を3年で辞めてしまう者が昔から一定割合でいるのだから、「選り好みするな」という批判は、若者の雇用を取り巻く環境の変化を検討しない限りあまり意味のあるものとはならないだろう。

 以上は、終身雇用、解雇規制に起因する問題である。この点についても次回詳しく扱う。

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