新型コロナウイルスの影響を受け、激動のシーズンとなった2020年のプロ野球は両リーグの優勝チームが決まった。セ・リーグは巨人、パ・リーグでは福岡ソフトバンクホークスが独走V。しかしクライマックスシリーズ(CS)が実施されるパでは優勝チーム以外で2位のみファイナルステージへ進出できる出場権をかけ、熾烈な三つ巴の争いが今も繰り広げられている。
1日は2位・千葉ロッテマリーンズが本拠地のZOZOマリンスタジアムで4位・東北楽天ゴールデンイーグルスを相手に延長10回、規定の末に3―3の引き分けに終わった。楽天としては4回に逆転し、そのまま逃げ切りを図りたいところだったが終盤の7回に追いつかれて痛み分け。相手のロッテが3安打3得点だったのに対し、その4倍の12安打も放ちながら僅か3得点しか奪えず11残塁に終わり、慢性的とも言える決定力不足は相変わらずシーズン最後まで尾を引いている。
勝てるはずの試合を勝ち切れなかったショックも大きいはずだ。しかも今シーズン最後となるロッテとの大事な直接対決3連戦を1勝1敗1分で終え、その差を結局少しも縮めることができなかった。残り5試合しかないことを考えれば、これは痛恨極まりない。
一方、三つ巴の争いに加わっている3位の埼玉西武ライオンズは1日、本拠地のメットライフドームですでに優勝を決めているソフトバンクに3―1で快勝した。1日現在で2位・ロッテと3位・西武の差は1・5ゲーム。4位・楽天は3位・西武を1ゲーム、2位・ロッテを2・5ゲームで追う展開となっている。ロッテが残り6試合、西武が残り7試合という背景からも3チームの中で最も残り試合数の少ない楽天は他力本願に加え、もう1つも星を落とすことは許されない。そういう気構えでいなければ、もはや奇跡の逆転CS進出は望めないだろう。
ただ、まだ可能性は残っている。ロッテも西武もチーム状態は決して良くはない。かなり苦しい立ち位置とはいえ、戦力的に最も揃っている楽天が土壇場で総力を振り絞り、何とか奇跡を呼び起こしてくれるはず――そう願っているのはイーグルスファンだけでなく楽天の球団フロントも同じだ。
楽天の球団幹部は優勝を逃した今、チームには何とか2位に滑り込んで欲しいと祈るような思いでいるに違いない。3位以下に沈み、CS進出を逃せば監督の続投問題が必然的に再燃しそうな雲行きだからである。
一部スポーツ紙で報じられた通り、就任1年目の三木肇監督の来季続投は球団内で基本線とされている模様だ。就任当初に球団の石井一久GMがメディアに複数年契約を締結する方向性を示唆しており、その流れに則っとる形での続投とみられている。
だが、多くのファンは納得していない。なぜならば昨季、就任1年目でチームを前年の最下位から3位に引き上げた当時の平石洋介監督(現ソフトバンク打撃兼野手総合コーチ)が契約を更新されず退団に追い込まれているからだ。球団史上初の生え抜き監督としてかなり人気が高く、その手腕は評価されて然るべきものだった。
昨季のチーム成績も貯金は3つあり、優勝した西武とゲーム差は7・5。1日現在で借金が2、優勝したソフトバンクと昨季の倍以上となる15・5ゲームも引き離されている現況を鑑みれば、ここまで昨季よりも苦しい戦いを強いられていることは明白だ。仮にこのままチームがCS進出を果たせなくても三木監督の来季続投が正式に決定するとなれば、僅か1年でクビを切られる格好となった平石前監督の〝解任劇〟は一体何だったのかということになる。
平石前監督との契約を更新せず、三木監督を二軍監督から内部昇格させる選択を決断したのは、編成トップの石井GMだ。昨年10月11日には平石前監督の退任理由について文書を報道陣に配布し、その異例の行動が各メディアで報じられると大きな波紋を呼び起こした。
配布された公開文書の中では「今後5年・10年と選手やスタッフが変わってもチームカラーやプレーの伝統というものは受け継がれていきます。今のチームにはその改革やチームの伝統の基礎を上手く促進できる方にチームを預ける必要があるのではないかと考えています」との文言も記されており、その適任者として白羽の矢を立てたのが三木監督ということになる。
ちなみに三木監督は石井GMと同じヤクルトスワローズ出身。今季の一軍スタッフにもヤクルトOBが多く名を連ねている。生え抜きの平石前監督が事実上〝解任〟された流れに未だ不満を持ち続ける地元ファンの中からも「単にお友達で固めただけではないのか」とうがった見方まで向けられているほど。実際、そうした厳しい反応とハレーションはネット上のコメントを見ても一目瞭然であり、残念ながら疑いようがない。
昨年10月14日、三木監督の就任会見終了直後に楽天生命パークで新体制のもと始動した秋季練習の初日。石井GMは選手たちの前でこのようにも発言している。
「3位になれたのか、3位にしかなれなかったのか、みんなもう1度考えてほしい。僕の中では3段階に分けたらBクラス」
前日13日にラグビーW杯で強豪10カ国・地域を示す「ティア1」に属するスコットランド代表を「ティア2」の日本代表が「ONE TEAM」で撃破したことをなぞらえた。この当時、各メディアでもイーグルスの三木新体制スタートが「打倒ティア1」としてセンセーショナルに報じられたのは記憶に新しいところだろう。
それを踏まえれば、いくら前出の公開文書の中で「まず、大前提としてイーグルスを中長期的に優勝を目指せるチームに作っていかないといけないと考えています」と記し、三木監督と「中長期的に」複数年契約を締結していたとしてもCS進出を果たせず3位以下に沈むようならばどうしても示しはつかない。