2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2020年10月26日

 依然として先行きは不透明と言わざるを得ない。来夏に延期された東京五輪・パラリンピックの開催だ。欧州やロシアでは新型コロナウイルスの感染が再拡大。米国でも第2波の勢いが急激に増しつつあり、南米大陸でも感染者の増加が続いている。アジアを見ても爆発的感染の続くインドを筆頭に、この邪悪なウイルスがまたしても世界各地で猛威を振るう傾向にあることは誰の目にも明らかだ。

 それでも、日本政府は就任したばかりの菅義偉首相の大号令のもと「コロナに勝った証に」と強行開催する方針を変えていない。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会も無論、同じだ。

 大会組織委員会はIOC(国際オリンピック委員会)の調整委員会と先月25日にオンライン会議を開催し、52項目の簡素化で合意。この会議を終えたIOCのジョン・コーツ委員長は半年に渡る議論の末に合意へこぎつけた52項目について「東京モデルと名付ける。これが将来の五輪の参考になる」と高く評価した。

 そして大会組織委員会の森喜朗会長も「簡素化の真の目的は人々が新しい日常で生活する中で、今後の世界規模のロールモデルを示すこと。将来にわたって東京大会を人類のレガシーとすることができるよう引き続き努めたい」と胸を張るように力説している。大会組織委員会とIOCはコロナ禍の中、来夏延期を強いられながらもあらためて必ず開催することで意見が一致し、その揺るがない姿勢を互いに示していたように見えた。

(BalkansCat/gettyimages)

 ところが、それからわずか1カ月後――。大会組織委員会の中で〝ある不安〟が充満するようになっている。来月中旬に来日する方向性でほぼ固まっているIOCのトーマス・バッハ会長について「日本側に中止を通達するのではないか」との情報が錯そうし始めているからだ。大会組織委員会側によれば、来日はバッハ会長自らが強く求めているとされ「東京大会開催に向け、ともに手を取り合って頑張っていこうという意思確認のような場になることを期待している」という。しかし、その公の声明とは裏腹に期待通りに事が運ぶかどうかは「実際のところ、全く分からない」(大会組織委員会関係者)。

 意気揚々と「必ず開催」をぶち上げる森会長ら幹部らをよそに、大会組織委員会の関係者の間では「ここ最近になってまるで大会中止へ舵を切らせるかのような情報が方々から飛び交い始めており、この裏側には本当に〝何かとんでもない事〟があるのではないか」との疑念も高まっている。

 バッハ会長の来日目的も日本側は希望的観測を持っているだけで実を言えば明確に把握できていないという。そういう背景があれば、憶測を呼び起こして震え上がっているのも当然の話かもしれない。バッハ会長に関しては来月16日、もしくは17日に菅首相との直接会談の場も設けられることで調整が進められているというが、もしそこで本当にいきなり「中止」を通達されれば日本政府や大会関係者はただひっくり返るだけの騒ぎだけでは済まされなくなるだろう。

 大会組織委員会の面々も内心で不安視しているバッハ会長の〝ちゃぶ台返し〟。このまさかの流れを裏付けるかのような話は確かに各方面から噴出し始めている。前出の関係者が「大会中止へ舵を切らせるかのような情報」の存在を口にしたように、つい数日前には「IOCが東京五輪、開催中止」という類のワードがSNS上へと拡散した。その発端となったのは、元博報堂社員で五輪関連の著作もある作家・本間龍氏のツイートと動画サイト。21日夕方、政府や大手広告代理店の内部情報として、欧州各国で新型コロナウイルスの新規感染者数が爆発的に増加したことでIOCが東京五輪中止を決断したと「スクープ」され、大きな反響を呼んだ。

 この話題は政府にも波紋を及ぼす事態となり、橋本聖子五輪相が23日の閣議後の会見で本間氏のツイートについて「(中止の事実は)まったくありません」と明確に否定。大会組織委員会側も各メディアに対し「IOCからの中止勧告はない」と強調している。

 しかし、政府や大会関係者の公式コメントだけを鵜呑みにするのは早計だろう。本間氏の情報については独自の情報網を築き上げている点から、大会組織委員会の間でも「一目置かれているところもある」と言われており、どうやら〝柳に風〟と受け流されているわけではないようだ。


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