さすがに「厳しい」と言わざるを得ない。今年のプロ野球ペナントレースはセ・リーグで巨人が首位を独走中。3位の横浜DeNAベイスターズは巨人相手に本拠地・横浜スタジアムでの直接対決で同一カード3連勝を狙ったが、20日の3戦目は0―5と完敗を喫して結局2勝1敗に終わった。そのため巨人との差は直接対決前と比較して1つしか縮められず同日現在で「11ゲーム」となっており、絶望的な数字が重くのしかかっている。
そのベイスターズで逆風にさらされているのがアレックス・ラミレス監督だ。ベイスターズファンからの批判もかなり多く、今季限りでの監督交代を求める声がネット上でここ最近の〝名物〟のように散見される。
今年で就任5年目。昨年のCS(クライマックスシリーズ)ファイナルステージ敗退直後、フロントから契約を1年延長され、今季のリーグ優勝を厳命されていたが、ここまでの戦いぶりを見る限り大願成就とは行きそうもない。しかも今季は自らが柱とするデータ重視で時に奇策も用いる〝ラミ流采配〟がことごとく裏目に出て、辛酸を舐めさせられる試合が非常に多く目立つ。
それでも敗戦後のコメントでは自ら反省の弁を口にすることはほぼなく、サバサバとした表情とともに一貫して「これも野球」「明日は違う日になる」などとお決まりの言葉を繰り返す。ポジティブにとらえていると評せば聞こえはいいかもしれないが、やはりラミレス監督に常々批判を向ける人たちからすれば「データ采配が裏目に出ているにもかかわらず、そこに触れないのは明らかな責任回避ではないのか」という強い疑念があるのかもしれない。
ちなみに負け試合でもラミレス監督は就任当初から必ず報道陣の囲み取材に応じており、内情について良く分かっていない一部の人が美談ととらえている向きもあるが、これは正確に言うと中畑清前監督の体制時からフロントとの取り決めとして定められ、今も引き継がれているルーチンワークである。つまりラミレス監督の「器の大きさ」を示す材料には結びつかない。だからホームゲームでの敗戦後、丁寧な口調でテレビインタビューに応じるラミレス監督の姿を見ても前出のアンチの人たちは〝騙される〟ことなく、かなり冷ややかな目で常に見つめているようである。
とはいえ、少し冷静な視点から見つめ直してみたいと思う。確かにラミレス監督が指揮を執った過去4シーズンでリーグ優勝を経験したことは1度もない。ただ、就任1年目の2016年シーズンではそれまで12球団中唯一、出場実績がなかったクライマックスシリーズ(CS)への出場権をリーグ3位に滑り込んでつかみ取り、ファイナルステージまで進出。
翌17年にはリーグ3位からCSファイナルステージを突破し、最終的に福岡ソフトバンクホークスに敗れて日本一は逃すも19年ぶりの日本シリーズ進出を果たしている。18年はAクラス入りをかけたデッドヒートの末にリーグ4位に終わり、CS出場権は得られず。しかしながら19年の昨季は22年ぶりのリーグ2位となり、再びCSへ出場してポストシーズンを戦った。
自身が就任するまで過去10年間ずっとBクラスで迷走していたチームをAクラスがほぼ定位置となるレベルにまで引き上げた。このラミレス監督の功績は間違いなく称賛されるべきことである。しかも昨オフはチームで主砲とキャプテンを兼務していた大黒柱の筒香嘉智外野手がメジャーリーグのタンパベイ・レイズへ移籍し、戦力に大きな穴が空いた。しかしながら、その4番兼主将の大役に佐野恵太外野手を抜擢して見事に花を開かせ、欠けていたピースを完ぺきに埋めることに成功。ドラフト9位入団のプロ4年目・25歳の佐野の大ブレイクを導いたのは、誰が何と言おうともラミレス監督の眼力によるものである。
さらに言えば「ボロボロとなっている惨状の割に、チームはAクラスで何とか踏ん張って戦い続けている」という評価が球団内から聞こえて来ているのも事実。今季はコロナ禍の特例シーズンで全120試合の超過密日程となっているが、その影響をモロに受けていることもあってか、チームは投打の主要メンバーたちが次々とコンディションを崩したり、不調に陥ったりしたことで戦列を離れるという憂き目にあっている。
エース左腕の今永昇太投手と、そして今シーズン8試合連続クオリティスタートを達成し、一時期防御率トップと大ブレイクを果たした右腕・平良拳太郎投手の左右両輪がケガにより、そろって8月半ば過ぎに登録抹消。絶対守護神としてチームを支え続けていた山崎康晃投手も開幕直後から過去例を見ないほどの絶不調に陥って早々に中継ぎへ配置転換されたが、今も復調を遂げるに至っていない。
ニューヨーク・ヤンキースでメジャーデビューし、今季からチームの新大砲として鳴り物入りで獲得してきたタイラー・オースティン内野手も試合中の守備で首を負傷し、7月末から1カ月以上も一軍から長期離脱を強いられていた。〝DeNA最強助っ人〟とも評されるホセ・ロペス内野手も大スランプにハマり込み、8月末にケガ以外で初めてファーム行きとなった。こうした苦境にさいなまれながらも、ラミレス監督はメンバーをやり繰りしながら「それなりに奮闘している」と見ている人も球団周辺で意外なことに少なくないようである。
そうはいっても前記したように今季のラミレス監督にはデータにこだわり過ぎるが余り、不可解な采配となって自滅するパターンが例年以上に頻発している。絶対に落とすわけにはいかなかった今月3日の巨人戦(東京ドーム)で本来ならば中継ぎのスペンサー・パットン投手を〝オープナー〟として先発させる奇策に打って出たが、1回1/3を投げて7安打2被弾で9失点と大失敗に終わったのは、その最たる例と言っていい。
このような結果となっても迷采配をふるったラミレス監督が試合後に反省する素振りも見せず「野球は勝つこともあれば、負けることもある」と淡々と口にすれば、応援している側からすれば「単なる開き直り」にしか映らず〝ふざけるな〟となって怒りを覚えるのも無理はないだろう。
ベイスターズのOBからは次のような指摘も飛び出している。