2022年12月7日(水)

VALUE MAKER

2021年1月2日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

成熟した国に集まる時計

 そんな「ケアーズ」では70年代半ば以降の時計はほとんど扱わない。当時の時計メーカーは、クオーツに対抗して機能性を重視する一方、コストを下げるために駆動部分のムーブメントを外注したり、他社製品にブランド名だけを付けるOEM生産が急拡大した。「この時代の時計は、おそらく100年たってもアンティークとしての価値は生まれない」と川瀬さん。本物を求めた時代に作られた本物だけが価値を持ち続けるということだ。

米国から取り寄せたアンティーク・ショーケース

 川瀬さんが懸念しているのが、古いモノに価値を見出す「文化」が若い人たちに受け継がれるかどうか。バブル期にアンティーク時計に目覚めた世代が高齢になり、大事にしてきた愛品を手放す相談が増えている。若者が徐々に貧しくなっていると言われる中で、父から子へ、そして孫へと代々受け継がれるべきアンティーク時計が行き場を失っていくのではないか。

 アンティーク時計の世界では米国とドイツに大きな市場がある。「文化的に成熟した豊かな国にアンティーク時計は集まるんです」と川瀬さんは語る。

 経済が急成長している中国の消費者は、まだまだ最先端の新製品に価値を置き、アンティーク市場では存在感がない、という。果たして日本はどうなっていくのか。古いモノに価値を見出し、それを生活の中で楽しむ「余裕」を持ち続けられるのか。アンティーク時計を修理し、価値を吹き込み続ける川瀬さんの取り組みは続く。

写真=湯澤 毅 Takeshi Yuzawa

  
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◆Wedge2020年12月号より

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

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