(図表3) 中国の生産年齢人口増加率の推移
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リーマン・ショック後の過大な設備投資が従来以上に投資や輸出に偏重した経済構造を作ってしまったことも、中国政府が新たな景気刺激策に消極的な背景といえる。すでに中国は世界一の輸出国となっており、さらなる輸出促進につながる景気刺激策は経済のひずみを拡大させるばかりだ。
また、中国にとって、雇用面から8%以上の経済成長を必要とする時代が過ぎたこともある。少子高齢化が進みつつあり、生産年齢人口の増加率はこの10年で1%ほど低下している(図表3)。新規就業者の人数は漸減しており、今後も高成長を続ければ、むしろ地域によっては人手不足や賃金高騰が深刻になりかねない。
ポスト胡錦濤政権の経済戦略は量から質への転換
中国では、この秋に胡錦濤国家主席が退陣し、新たな指導体制が発足する。現在、2015年までの消費主導型成長への転換などを掲げる第12次5か年計画が実施されている最中であり、政権交代があっても、当面大きな経済戦略の転換は考えにくい。
したがって、当面の経済政策についても、7月31日開催の中央政治局会議で示された「安定成長」が「堅持」され、「2012年の成長目標7.5%の実現」を踏まえて現状程度の経済成長が容認されることとなろう。
しかし、新たな政権の誕生は、当然新たな経済目標が策定されることでもある。いままでの高成長を重視した政策は、非効率な資源・エネルギーの消費をもたらした。ところが現在では、資源・エネルギー制約が強まっている一方、人口増加圧力は逓減している。新たな政権は、「安定成長」を是認した上で、経済の効率化にもっと軸足を置くものと思われる。