2024年11月22日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年8月30日

 このことは、今年2月に世界銀行が発表した「2030年の中国」からも窺える。そこでは、将来の中国経済の成長が効率的な市場経済の形成にかかっていることを示しており、国有企業民営化や民間部門の発展などに言及している。

 国有企業民営化については、中国内で反対も強い。国有企業が、中国経済の大きな基盤であり、強力なけん引役であるからだ。しかし、国有企業を含めた既得権益の排除を通じて一層の経済効率化を実現することが、中国経済のポテンシャルを一層引き出し、中国企業の生産性と競争力向上に結びついていくことも事実だ。

 かつて、日本経済が70年代に高度成長から安定成長にシフトしたように、いま中国経済も高成長から安定成長への大きな転換期を迎えている。中国の経済戦略も、安定成長にソフトランディングする方向にあり、大きな方向性は指導層が交代しても変わらないだろう。

 いままでの常識にとらわれて、10%台での高度成長を前提に中国経済をみてはならない。「安定成長の堅持」と、成長の軸足を量から質に移すことをも意味する経済効率化が、まさにこれからの中国経済のソフトランディングと新たな経済成長戦略の道筋を示すものであり、今後の中国経済のキーワードといえる。

[特集] 中国経済の危うい実態


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