「もう森会長を叩くことはやめにしませんか」
東京五輪に携わる日本側の全ての関係者からすれば、森会長の失言は残り半年を切った大会開催へ向け、世界中の主要メディアも一貫して断じているように明らかな「致命傷」だ。ところが驚くことに、それでも組織委内部では森会長を擁護する声も少なくない。大手企業から出向扱いとなっている組織委の中堅幹部クラスの1人は「もう森会長を叩くことはやめにしませんか」と世間に訴え、次のように続けている。
「確かに今回の問題発言には弁明の余地などないかもしれない。ただご本人も深く反省しており、世界中から批判を向けられていることが、ある意味で〝厳罰〟につながっていると思う。それを反省材料として必死に前へ進もうとしている姿勢を見ていただければ、お許しいただけるのではないか。もう80歳を超えている方なのですから。日本のスポーツ界に尽力してきた功労者であり、その森会長ご自身が東京五輪の成功を『最後の奉公』と仰っていることを、どうか叶えさせてあげてほしいです」
かつて総理大臣として政界のトップに君臨。その後は学生時代に没頭したラグビーへの情熱と経験を礎に2015年まで11年間に渡って日本ラグビー協会の会長職に就き、2019年に行われた第9回ラグビーワールドカップの日本初招致にも尽力している。森会長が水面下で日本スポーツ界の〝キングメーカー〟と呼ばれているのは、過去の経歴を振り返ってみれば確かに一目瞭然かもしれない。
前出の組織委幹部はこうも述べている。
「正直に言えば、森会長の代役は誰にも務まりません。無限のコネクションを持ち、世界中の政財界に顔が利く。何よりもスポーツの世界に理解を持っていただける元首相経験者は森会長を置いて他にいないでしょう。大会開幕まで約5カ月しかない中、森会長に代わる新会長を選任することなど不可能。組織委を筆頭に東京五輪の大会運営は大混乱に陥って暗礁に乗り上げてしまうことは必至です。ここまで組織委はスタートから一丸となって〝森体制〟で邁進してきました。どうか国民の皆様には東京五輪の『大会成功』という、大目標を完遂させていくためにも我々組織委、そして森会長を今後も叱咤激励していただきたいというのが願いです」
いずれにせよ、組織委内部では今も世界中から森会長バッシングが鳴り止まないことで深刻な〝内憂外患〟にさいなまれている。10都府県で緊急事態宣言が3月7日まで延長されるなどコロナ禍収束への出口も見えてこない中、東京五輪はまたしても新たな壁にぶち当たってしまった。今年7月23日の開会式まで残されている時間は限りなく少ない。
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