経済の常識 VS 政策の非常識

2012年9月18日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 しかも、ここには使用済核燃料の処理コストが十分に反映されていない。青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場は、7600億円で建設できるということだったが、トラブル続きで現在までに2兆1930億円かけていまだフル稼働にいたっていない。今後もコストが膨らむのではないだろうか。

 なお、政府は、2030年時点の発電量に占める原発の割合について「0%」「15%」「20~25%」の選択肢を示しているが、これは訳が分からない議論である。危険な原発、事故が起きたときの被害が甚大な原発に順序を付けて(もちろん、絶対に安全な原発を新たに建設しても良いが)、順番に廃炉にしていく結果、原発の割合が決まるのであって、比率が先に決まるはずはない。

 こんな訳が分からない話をしていれば、討論型世論調査をしても、政府の思惑とは違って「0%」派が増えるのは当然だろう。さて、話を、順序良く脱原発を行うコストに戻す。

 前述のように、東電の売り上げは5兆円、同社の売り上げは全国の3分の1だから、日本全体の電力の売り上げは15兆円である。そのうち3分の1が原発の電力売り上げである。これが1割高くなると年5000億円である。5000億円で日本経済は大して停滞しない。

 今すぐ脱原発を行えば、年3兆円のコストがかかるが、40年後なら年5000億円である。今すぐと40年後の間のどこで脱原発を行うかによって、コストはほぼ比例的に変化するだろう。20年後の2032年なら脱原発のコストは1.75兆円ということになる。

わざと高くみせている?

 脱原発派は、当然原発が嫌いであるが、火力も嫌いなようである。火力のコストは原発の1割増し程度のようだが、再生可能エネルギーのコストは4倍である(前述のコスト等検証委員会報告書によると、地熱は2割高程度だが風力は2倍、太陽光は4倍以上)。

 日本全体の電力売り上げは15兆円、原子力で作った電気の売り上げは5兆円であるから、すべてを太陽光エネルギーに置き換えるコストは45兆円、原子力分だけを置き換えるコストは15兆円である。これは脱原発よりも日本経済に大きな打撃を与える。

 政府も脱原発のコストが巨額であるとしているが、実は、このコストの大部分は、原子力を再生可能エネルギーに代替するコストであって、火力に置き換えるコストではない。例えば、再生可能エネルギーのために2030年までに50兆円の投資が必要であるとしている(国家戦略室「エネルギー・環境会議」経済産業省提出資料、2012年9月4日)。

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