経済の常識 VS 政策の非常識

2012年9月18日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 政府は原発の再稼働をしたいようだが、同時に、30メートル以上の津波が来るという予測も発表している(内閣府「南海トラフの巨大地震による津波高・震度分布等」2012年8月29日)。

 この予測がどれほど蓋然性が高いものか私には分からないが、これと原発依存とは矛盾していると思う。30メートルの津波でも大丈夫なような手段を取れば、原発はコスト高の発電手段になってしまわないだろうか。

 なお、脱原発には原発の廃炉コストを入れるべきだという方もいるが、これは間違いである。原発は永久に使えるものではないのだから、いずれ廃炉にしなければならない。コストとは、あることをすることによって追加的に必要となるコストである。脱原発をしようがしまいが、いつかは廃炉が必要になるので、これはコストに入らない。

火力と原子力のコストの差は?

 年3兆円とは、多少火力発電所を増設して、いますぐ脱原発をするコストである。危険な原発、事故が起きたときの被害が甚大な原発に順序を付けて、徐々に脱原発を進めていくコストはいくらになるだろうか。

 エコノミストにも事故が起きた時の被害がもっとも甚大なのは静岡市と浜松市に近い浜岡原発だと分かるが、どの原発がもっとも危ないかは分からない。しかし、一般に、古い原発ほど危険であろう。すると、耐久度の尽きた原発を順次廃炉にしていくことにコストはかからない。

 古いものは1970年代に建設されているから、40年後の2010年にはほぼ寿命が尽きるだろう。実際、廃炉にされたものもある。新しいもの、建設途中のものもあるので、40年後に脱原発とすれば、コストは3兆円ではなく、原発と火力の発電コストの差である。

 原発は建設コストが高いが燃料費が安く、火力は建設コストが低いが燃料費が高い。すでにある原発を使わなければ追加の燃料費すべてがコストとなるが、これから新しく火力と原発を造るのであれば、建設費(の減価償却費と金利分)+燃料費が比較すべきコストとなる。

 火力を使えば、燃料費は余計にかかるが、原発のような巨額の建設費はかからない。原発は安いと電力会社は主張してきたが、火力との差は1割程度にすぎないようだ(エネルギー・環境会議コスト等検証委員会報告書2011年12月19日)。

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