経済の常識 VS 政策の非常識

2012年9月18日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

脱原発にいくらかかるのか

 経済、経営関係では、性急な脱原発はただでさえ不調な日本経済をさらに停滞させると論じる識者が多い。しかし、そもそも脱原発のコストはいくらなのだろうか。

 2011年3.11以前、2010年までの東京電力の売り上げは5兆円、エネルギー価格の変動と原発の稼働率変化を反映して燃料購入費は大きく変動しているがほぼ2兆円であるとみなせる(東京電力企業情報ヒストリカルデータ)。

 火力の比率が6割、原子力の比率が3割と見なせるから、原子力を火力に置き換えると火力の比率を9割にしなければならない。そのために必要な燃料費は1兆円である。すなわち、原子力を止めて火力にするコストは1兆円である。

 東京電力は、日本全体の3分の1の電力をまかなっているので、日本全体の原子力を止めて火力にすることのコストは1兆の3倍の3兆円である。もちろん、新たな火力発電所も作らなければならないが、すでにかなりの過剰設備があったので、それほど大きな投資はいらないようである。

 また、新たに火力発電所を作れば、それは当然にエネルギー効率の高いものなので、燃料費は節約できる。概算としては年3兆円で良いだろう(さらに厳密な数字で私の誤りをただしていただける方がいたらありがたい)。

 化石燃料はこれからも上昇していくのだから、3兆円ではすまないという批判があるかもしれない。しかし、シェールガスの採掘によって、化石燃料価格が今後下落する可能性も十分考えられる。

 日本のGDPは約500兆円だから、3兆円はその0.6%である。消費税1%分が2.5兆円だから、負担と言えば負担だが、何とかなると言えば何とかなるコストである。

 もちろん、消費税は国内の移転にすぎない。取った分は、現在、公共事業などに無駄遣いするか、将来の高齢化に備えて社会保障を維持するためかのいずれかに使われる(どうも前者になりそうだが)。いずれにしろ、国内で使われる。

 それに対して、燃料費が余計にかかるのは、全て国外に流出してしまうお金である。だから、消費税より経済悪化効果は大きいという批判があろう。批判は正しいが、どうしても負担できない金額ではない。要は、原発のリスクがどれだけ大きいかという判断の問題である。

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