2022年12月5日(月)

VALUE MAKER

2021年8月22日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 長年、ゴミを扱ってきた小松さんたちは、本当の「ゴミ」からゴミ袋を作れないか、と考えた。企業が出すプラスチックゴミは企業がお金を払って処理しているが、それを「原料」に変えられれば、逆に売ってお金を得ることができるかもしれない。社会にも企業にもメリットがある。ゴミから価値を生み出すことができるのだ。

本当のゴミを原料に再生されたゴミ袋

 プロジェクトが本格的に動き出したのは20年3月。パートナー企業のネットワークを使って、梱包に使った使用済みのストレッチフィルムを集めることにした。工場などからいくつもの段ボール箱を出荷する時に、グルグル巻きにして固定するためのプラスチック資材だ。

 これをプラスチック加工会社に運び、ビニール袋にする。強度を保つには、どうしても「つなぎ」としてOG品などが必要なうえ、不純物が混じって半透明になるので、色剤などを加えると、純粋なゴミ原料は99%ということになる。それでも何とか製品化できた。45㍑から120㍑までいくつかの種類を作った。通常売られているゴミ袋と同じくらいの価格で販売してもコストが見合うことが分かった。

 20年夏には、パートナー企業40社の協力で1カ月の間にストレッチフィルム70㌧を回収、累計では100㌧以上を集めた。これは45㍑ごみ袋411万枚に相当する量だという。

 問題は、それをどう売るか。

 これもパートナー企業のネットワークを活用した。業務用のゴミ袋として企業に買い取ってもらうのだ。多くの企業はCSR(企業の社会的責任)活動に力を入れている。そうした企業に「このゴミ袋に切り替えることで、二酸化炭素18㌔グラムの削減につながります」とアピールしたのだ。企業はCSR報告書にそれを書き、社会や株主に取り組みのひとつとして報告できる。「小さな努力の積み重ねとはいえ、お客様に環境保全に一歩踏み出してもらうきっかけにできる」と小松さんは考えたという。

 小松さんはこのプロジェクトを「FUROSHIKI(ふろしき)」と名付けた。古くからモノを大切にする日本人は、包装や物を持ち運ぶにも、何度も使える風呂敷を活用してきた。そんな日本人の伝統的価値観を思い出してほしいという思いがこもっている。

 このプロジェクトに協力する企業が急速に増えている。そのきっかけは、小松さんの古くからの友人である柴田知栄さんの協力が大きいと小松さんは言う。柴田さんは第一生命保険のトップ・セールスレディ。柴田さんがプロジェクトの意義に共感したのをきっかけに、第一生命が東日本の法人営業社員に、顧客企業にプロジェクトを紹介するよう号令をかけたのだ。第一生命自身、ESG(環境・社会・企業統治)投資に力を入れていた矢先だった。柴田さんは「プロジェクトの背景にある考え方が素晴らしいと思います。最終的には個人一人ひとりに広がっていくことが大切で、そのお手伝いができればと考えました」と語る。

 そんな広がりもあって、昨年10月、このFUROSHIKIが「グッドデザイン賞」に選ばれた。この賞は商品の色形だけでなく、事業の仕組みなども対象にしており、それに選ばれたのだ。審査委員は「自国のゴミは、自国で処理し、循環させることができる社会に向けて、FUROSHIKIの取り組みは非常に意義深いものである」と評価していた。

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