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2020年12月31日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

【浜田高夫(はまだ・たかお)】 
1949年岡山市生まれ。サラリーマン時代からホールを借りるなどして自主上映を始め、94年にシネマ・クレールを開館する。

 誰しも故郷の街を懐かしく思い出す時、文化の匂いが香るお気に入りの場所が目に浮かぶのではないだろうか。

 学生時代に通ったクラシックのかかる喫茶店だったり、立ち読みに通う本屋だったり、展覧会が開かれる公民館が、青春時代の記憶として蘇るに違いない。それらが街そのものや人々の生活に、価値を付け加える。

 そうした場所が街から消えそうだと聞けば、真っ先に駆け付けたい衝動に駆られることだろう。

 岡山市の中心部、岡山城や県立図書館、美術館にもほど近い岡山駅から続く路面電車が走る県庁通り沿いに、市民に愛され続けてきた映画館がある。「シネマ・クレール丸の内」。1階と2階に2つのスクリーンを持ち、110席と60席の合わせて170席の小規模な映画館だ。いわゆる「ミニシアター」である。 

「学校帰りによく通った思い出の場所です」と、今は東京に住む岡山市出身の41歳の主婦は目を細める。上演スケジュールが書かれたチラシと腕時計を睨(にら)んで、気ぜわしく路面電車に乗った日々を懐かしむ。

 そんな多くの人たちに愛される街のミニシアターが、新型コロナウイルスの蔓延で経営難に直面したのだ。

 「どうでしょうか。来館者は一時は半分以下に減ったでしょうか」と支配人の浜田高夫さんは語る。

 東京や大阪で新型コロナが広がり、劇場やライブハウスでクラスターが発生したこともあり、全国の劇場や映画館は営業自粛を迫られた。「シネマ・クレール」も4月末からのゴールデン・ウイークの時期に休業を余儀なくされた。その後、新型コロナ対策を万全にして営業を再開したものの、なかなか客足は戻らない。

 「1994年にシネマ・クレールを創設して以来、様々な困難を乗り越えてきましたが、今回はまったく初めての厳しい状況です」と浜田さん。新型コロナが終息しなければ、早晩、経営が立ち行かなくなるところまで追い込まれた。

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