2022年12月6日(火)

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2020年12月31日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

目標額は1000万円

 浜田さんは運営を維持するためにクラウド・ファンディングで資金を集めることを考え、岡山NPOセンター代表理事の石原達也さんに相談した。すぐさま石原さんは有志を募って「シネマ・クレール応援団」を立ち上げた。5月のことだ。

 ネット上に掲げられた「趣旨文」にはこうあった。

 「公園も、音楽ホールも、美術館も、僕らが生きていくのに欠かせない。そして、ミニシアターも」

 どうにかして「シネマ・クレール」を守ろうという訴えに共感の輪が広がった。多くの市民から「みんなのシネマ・クレールの思い出」というメッセージを集め、ホームページに次々と掲載していった。

 「実家から歩いて行ける、私にとって身近な映画館です」(神戸市・33歳)

 「人生で出会った夢のともしびのような映画館です。大好きです。ここしかない。特別」(岡山市・46歳)

 そんな、多くの声が集まった。

 さらに、映画監督の行定勲さんや、俳優の前野朋哉さん、脚本家の荒井晴彦さんら著名人からも多くのメッセージが寄せられた。100人を超える老若男女が「応援団」になった。

 クラウド・ファンディングは6月5日から始めた。「ミニシアターを街に残そう!~シネマ・クレール存続プロジェクト」と題し、目標額を1000万円に設定した。地元のテレビ局や新聞もこうした応援の動きを取り上げてくれた。

 募集開始から驚くべきスピードで目標額をクリアした。最終的に1133万円を集めて7月20日に終了した。支援者は何と1087人に及んだ。いかに多くの人々が「シネマ・クレール」という場を残したいと思ったか、が明らかになった。

 浜田さんは、会社員時代から自主上映会を開くなど映画好きだった。それが高じて94年に今とは別の場所に「シネマ・クレール」を建てた。ミニシアター全盛の頃だ。01年には現在地に「新館」を建て、来年で20年になる。世の中がシネマ・コンプレックス(シネコン)ばやりになる中を生き残ってきた。

ゆったりとした客席で映画が鑑賞できる

映画を観る作法

 「シネマ・クレール」には何か特色があるのか。浜田さんが上映する映画に何か特別な選定理由はあるのだろうか。

 「できるだけ、観終わった後に心に残る映画を上映したいと思いますし、皆様のご要望にも応えたいと思っています。映画は娯楽映画だけではなく様々な映画があるので、たくさん観てもらいたいです」

 1日だいたい6本の映画を上映する。19年の上映本数は213本に及んだ。

 「何事でも沢山のものに触れることで目が肥えていくものですが、映画も同じです」と浜田さんは言う。

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