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2021年3月22日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

疑惑の時代の清涼剤

 身辺清潔だったのは浜口、浅沼だけではない。冒頭に触れた西郷、板垣のほか、憲政の神様といわれた尾崎行雄、「五・一五」事件で暗殺された犬養毅、最近では、「首相の座を蹴った男」、元官房長官、伊東正義らの名もしばしば聞かれる。

 浜口、浅沼についても異なった評価もあるだろう。しかし、あえて取り上げたのは、総務省のスキャンダルにうんざりしている国民も、かつて身辺清潔な政治家、官僚が活躍していたことに救われる思いを感じるだろうと思うからだ。 

誠実さ欠く疑惑の政治家、官僚

 総務省の問題に少しだけ触れてみたい。

 今回の問題は、多額のワイロが動いたケースではなく、高額ではあるものの接待、饗応だ。そのせいか、検察など捜査当局に表立った動きはみられないようだ。

 しかし、国会でのやり取りなどからみるかぎり、総務省の当事者はじめ、菅首相ら政府首脳に誠実さ、正直さの欠けることが、国民の強い反発を呼んでいると思えてならない。

 国会で追及を受けた同省の官僚がうそを重ね、省内調査が進行中であることを盾に答弁を拒む。総務相自ら委員会の席で事務方に「記憶にないと言え」と指示、追及されると「無意識に口に出た」と人を食ったような弁明をする。

 野党の舌鋒が政権の失点探しと感じられることを割り引いても、不十分な省内調査を国権の最高機関に優先させ、大臣が不誠実な答弁を指示したりすることは許されまい。

 2人の総務大臣経験者にも驚いた。元部下が国会で窮地に立っているときに、同様に業者と会食していた事実をひた隠し、発覚すると、「会費を払った。それを上回る費用がかかっていたなら先方の約束違反だ」と開き直る。職務に関する依頼はなくとも、饗応を受けただけでも収賄になることを知らないのだろうか。

  追及逃れのように辞職した官邸の高官の退職金は5000万円にものぼるという。

 饗応役人に平均的な国民の何倍もの退職金を税金から払うほうも払うほうだが、罪の意識もなく受け取る方も受け取る方だ。実際に支給されたとしたら、コロナ騒ぎに苦しみながら額に汗して働く納税者の悔しさをどう感じるか。  

 疑惑の時代にあって、私利私欲がなく、身辺を飾らない政治家がいかに新鮮に思えることか。

 かれらがいま健在だったら、何と言うだろう。

  
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