思い起こすのは、2002年、北朝鮮の核開発再開が明らかになった〝第2次核危機〟の際の6カ国協議だ。
米国は当時、イラク攻撃を控えて北朝鮮問題へ取り組む余裕がなかった。当時のブッシュ政権は、北朝鮮との関係が良好な中国に6カ国協議の議長を委ね、その影響力による核問題の解決をはかった。
こうした経緯を念頭に、バイデン政権は、6カ国協議における中国と同様の役割を日韓両国に期待しているのかもしれない。それだけに、日本にとっては、対応を誤り米国の失望を招いて日米同盟全体へ悪影響をもたらす事態は避けなければならない。
就任直後に警告したバイデン大統領
2019年2月、ハノイでの米朝首脳会談が決裂に終わって以来、表面上大きな動きは見えなかった。
しかし、北朝鮮は3月25日に短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射、これに先立つ21日には通常ミサイルの実験を強行した。バイデン米大統領は25日に行った就任後初の記者会見で、「あらたな挑発に対しては相応の対応をとる」と警告した。そのうえで、同盟国との協議を続けていることを明らかにした。
北朝鮮がこの時期に、発射実験を行ったことについては、さまざまな憶測がなされているが、やはり3月に行われた米韓合同軍事演習への〝報復〟とみるのが自然だろう。
バイデン大統領は、「相応の対応」に言及したが、具体的な内容には言及を避けた。「外交的な形式をとることもありうる」とも述べ、北の拒否にもかかわらず、対話を再開する可能性も示唆した。
大統領の意図は、国連安全保障理事会であらたな制裁を検討する一方、外交交渉を継続したいとの方針とみられる。
議題が「非核化」だけなら、北朝鮮は決して対話に応じてこない。米国側は、制裁緩和の条件など前向きな〝鼻薬〟を用意しながら先方の出方を忍耐強く待たなければならないだろう。
トランプー金正恩両氏による握手が期待を高めた時期は終わった。北朝鮮の核開発問題は、地道な外交努力が必要とされる時代に戻ったようだ。
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