2022年7月1日(金)

Washington Files

2021年4月12日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

民主党は投票権拡大で対抗

 これに対し、民主党も各州で対抗措置として、共和党とは逆に、黒人やヒスパニック系有権者が投票しやすくする郵便投票、不在者投票の柔軟対応を可能とする各種法案を出し始めており、両党入り乱れて投票制度改革に乗り出した州の数は最低でも50州中43州に及んでいるという。まさに国じゅう挙げての投票制度改革合戦の様相を呈している。

 さらに、民主党は州レベルでの動きとは別に、連邦法改正による投票権拡大めざし、去る3月3日、下院本会議で多岐に及ぶ投票制度改善策を盛り込んだ法案を賛成多数で可決した。同法案は、共和党主導の各州における「投票抑圧voter suppression」措置の無効化を目的としたもので、1960年代半ば、ジョンソン民主党政権が初めて打ち出した「投票法改正措置」以来の大改革と位置付けられている。

 同法案には①各州における投票の際のID提示義務の撤廃②有権者投票登録の自動化の徹底③投票日前投票および郵便投票の拡大④刑期修了者の投票権の復活⑤マイノリティ有権者を差別する選挙区区割りの禁止⑥予告なしの投票所変更の禁止⑦投票ボックス設置数の恣意的削減の禁止⑧同性愛有権者に対する差別撤廃―など細かな内容が盛り込まれており、全体として投票時における性差別、人種差別などの禁止に重点が置かれている。同法案が成立した場合、共和党にとってはそれだけ不利となる。

 ただ、同法案はこの後、上院審議にかけられるが、下院とは異なり野党共和党議員が採決を妨害する戦術の一つである審議引き延ばしの「フィリバスターfilibuster制度」行使に出ることは確実なため、今のところ法案可決のめどは全く立っていない。「フィリバスター」棄却には上院議員100人中60人以上の支持が必要だが、共和党議員50人全員が反対に回ると予想されており、当面動きが取れない状態が続いている。

 民主党側は最悪の場合、「nuclear option(究極の選択)」と呼ばれる強硬措置により、ハリス副大統領の票も加えた単純過半数で可決する道が残されており、同党急進派議員たちはこの非常手段に出るべきだと主張している。しかし、同党保守派実力者としてにわかにその存在がクローズアップされ始めているジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)が「両党が審議に時間をかけ超党派的合意をめざすために設けられた制度だ」として「フィリバスター」尊重の立場を崩しておらず、単純過半数可決さえおぼつかない情勢だ。(本欄3月29日付拙稿『バイデン大統領が最も恐れる“内なる敵”ジョー・マンチン』参照)

 ただ、この点に関連して、バイデン大統領がABCテレビ・インタビューで「フィリバスターの内容変更は可能であり、支持する」と述べたのを受けて、マンチン議員も「その可能性を検討する用意はある」と含みを持たせる発言をしており、今後、大統領との間で何らかの“取引”が行われる可能性もある。

 一方のミッチ・マコーネル上院共和党院内総務は、バイデン発言を受け「われわれは与党民主党の強硬措置には“焦土作戦”で徹底的に反対していく」と語気強め反論している。

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