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Washington Files

2021年4月12日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

“レトロ・アメリカ”重視型への転換

 いずれにしても、共和党が今回、各州レベルでの投票制度“改悪”にまで打って出た背景には、今後、中長期的に見て米国全体の人口動態および有権者属性傾向がますます同党にとって不利に推移しつつある点が挙げられる。

 すなわち、共和党はトランプ政権発足以来、思想的に保守体質をますます強め、支持基盤もグローバリズムに取り残された農鉱業人口への偏重が顕著になってきた。地域的にも、西海岸、東海岸に広がる都会人口に背を向け、内陸部の高齢化が目立つ過疎化した地方・閑村依存型政党へと変質しつつある。言い換えれば、未来志向から後ろ向きの“レトロ・アメリカ”重視型への転換だ。「アメリカン・ドリーム」体現から縁遠い戦略といえる。

 ところが、近年、全米有権者の人口動態は、明らかに共和党に不利な方向に移行しつつある。

 その一つは、トランプ前政権が拠り所としてきた高卒以下の白人有権者人口の減少だ。ニューヨーク・タイムズ報道(2020年10月22日付け)によると、2016年から2020年の4年間で500万人も減少した。対照的に、民主党支持者が圧倒的に多い大学卒以上の高学齢白人人口およびマイノリティ人口は1300万人も増加した。そしてこの劇的な人口動態の変化はまさにそのまま大統領選挙に反映された。すなわち、2016年で勝利し当選のカギとなった、高卒以下の白人有権者の多いミシガン、ペンシルバニア、ウイスコンシンの接戦3州において、トランプ氏は4年後の2020年大統領選では得票数を減らし、バイデン氏に接戦で敗れたことがそのまま敗戦につながった。高卒以下白人有権者数減少の結果とされる。

 共和党が依存度を高める白人低学歴層の人口減少と、民主党支持に傾斜しつつある高学歴白人人口とマイノリティ人口の増加というコントラストは、今後将来に向けてますます顕著になるのは必至とみられている。

 さらに、共和党にとって気がかりなのは、女性有権者の投票動向の変化だ。

 例えば、オバマ氏が当選した2008年大統領選では、男性支持票が49%だったのに対し、女性支持票が56%と7%上回り、2012年再選の際はオバマ支持の女性票が男性票より10%も上回った。さらにトランプ氏が当選した2016年選挙における女性支持率では、ヒラリー・クリントン民主党候補がトランプ候補より13%も多かった。そして2020年選挙では、バイデン候補が女性票の57%を獲得したのに対し、トランプ支持は42%にとどまった。このように女性の共和党離れは歴然としており今後さらに加速するとみられている。

 このほか男女を問わず、2016年大統領選挙でトランプ候補を勝利に導いたミシガン、ウイスコンシンなど「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」を擁する閑村地帯においてさえも、昨年以降、共和党支持率の低下傾向が指摘されている。

 このように人口動態の変化を見る限り、共和党支持基盤はますます縮小しつつあることは明白であり、党勢逆転の見通しは当面立てにくいのが実態だ。

 そこで苦肉の策として今回編み出されたのが、民主党支持者の多いマイノリティ有権者の票を選挙でできるだけ減らし、勝機をつかむための投票制度“改悪”にほかならない。いわば“窮余の一策”ともいうべきものだ。

 果たして、アメリカ・デモクラシーの根幹にもかかわる両党間のこの熾烈な戦いはどのような結末を迎えるのか―その趨勢は国内のみならず世界にも影響を及ぼすことになるだけに、外国メディアも両陣営の攻防に大きな関心を寄せている。

  
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