Washington Files

2021年5月3日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

米政府が中国に対する対抗姿勢をむき出しにした結果

 バイデン大統領自身も、去る4月16日、ホワイトハウスで行われた菅首相との首脳会談で「中国の脅威」を念頭に置いた日米同盟の重要性を強調したほか、その前月31日には、ピッツバーグで行った2兆3000ドルにおよぶ巨額インフラ投資計画に関する演説で、「中国とのグローバルな競争で優位に立つ上で国内社会資本充実が不可欠」などと繰り返し中国の存在に言及、国民的理解を求めた。

 こうした中国に対する強気の姿勢については、野党共和党側も基本的に異論はないだけに、バイデン政権としては“渡りに船”と言っても過言ではない。(本欄拙稿4月19日付『「チャイナカード」を駆使したバイデン政権の景気浮揚戦略』参照)

 その一方でホワイトハウスは、アジア系米国人の多くが民主党支持であるだけに、ヘイトクライムに対する不安と懸念にとくに神経をとがらせており、今年に入りすでに対策として以下のような措置を打ち出してきている:

  1. バイデン大統領が去る3月30日、同問題に関する国民向け演説の中で、ヘイトクライム関連データへのアクセス強化、地元警察官に対するヘイトクライム対処訓練の刷新、言語バリアなどに起因する性的暴行被害者救済のための5000万ドル助成金支出、などを実施すると表明
  2. 司法省が独自に、アジア系市民に対する暴力行為取り締まりおよび刑事告発強化策の抜本的見直しに着手すると発表
  3. これまでアジア系米国民および太平洋諸島住民向けに経済的機会を提供する目的でホワイトハウスが開設した特別部会に対し、新たにアジア系ヘイトクライム問題処理を含めるよう指示した
  4. アジア系米国民および太平洋諸島住民が直接影響を受ける連邦政府各機関の政策全般について見直すためのホワイトハウス高官を大統領が近く任命

 このほか、米議会においても先月22日、上院が超党派で、アジア系住民への嫌がらせや暴力への具体的対処を盛り込んだ法案を賛成94人、反対1人の圧倒的多数で可決した。日系議員のメイジー・ヒロノ(ハワイ)女史らが提出したもので、司法省が各州、地元系警察に対しヘイトクライム通報の複数の言語によるオンライン化を指示することを求めたほか、保健福祉省に対しても、コロナ禍に関する人種差別的表現をなくすための指針作りを義務付けた内容となっている。

 ただ、米政府が中国に対する対抗姿勢をむき出しにし始めた結果、一般国民の対中国不信も広がり、ひいては中国系のみならず他のアジア系人種も差別対象にされる側面もある。この点で、参考になるのが、去る3月16日発表されたギャラップ世論調査結果だ。

 それによると、「中国は米国の最大の敵」と答えた人は全体の55%で、昨年調査時に比べ2倍となった。対照的に「中国に好感を持つ」人はわずか20%で、史上最低を記録した。

 党派別では、共和党支持者の76%が中国を「最大敵国」と見ているのに対し、民主党支持者は43%と開きがある。しかし、バイデン民主党政権が今後さらに、中国とのライバル意識を鼓舞する政策を打ち出すにつれ、民主党支持者の間でも、中国を敵視する見方が拡大することが懸念されている。

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