2024年7月23日(火)

Inside Russia

2012年10月19日

 リトアニア政府もすぐに外交手段に出た。クビリウス首相は「(カリーニングラード州とベラルーシの)原発は欧州の安全基準を満たしていない。ストレステストも行っていない」と声明を出した。もちろん、ロスアトム計画への反発からだった。

 今年6月には異例のレポートも公表された。リトアニアの治安当局が国会でこんな報告を行った。

 「リトアニアで、民族的、社会的、イデオロギー的な敵意を作り出そうとする外国の取組みが2012年も継続されている。彼らは、リトアニアの戦略的エネルギー計画にも企てを行っている」

 この公式レポートによれば、外国の治安機関や情報機関が、リトアニア国内のメディアやNGO、研究機関を使って、ビサギナス原発に関するネガティブキャンペーンを広めているのだという。リトアニアにある外国大使館が、反原発キャンペーンに資金援助さえしているとも指摘している。治安当局幹部は「彼らは、疑いなく、情報を梃子に使って、影響力を広めようとしている」と話した。

 「外国」「彼ら」とは名指しこそしていないが、もちろんロシアのことだ。事実、10月の国民投票と選挙を前に、リトアニア国内では庶民の間で、こんなことが言われるようになった。

 「自前の原発を作るよりも、近隣諸国から電力を買った方が安い」

 「原発を作ることで、国民の負担が増える」

 経済性の意味合いで、ビサギナス原発は不効率だとする世論は次第に高まっていく。それと反比例して、ロシアの依存状態から脱却するエネルギー安全保障の焦点はぼやけていった。

「日本の原発は危険」

 ロシア関係者からは、福島の事故を起こした日本の原発は危険だ、とする発言もなされた。昨年11月、カリーニングラード州の原発建設の責任者であるロスアトム幹部のセルゲイ・バヤルキン氏は「私たちは、欧州の中心部で(福島の事故に関連する)原子炉を建設する決定がなされたことに深い懸念を抱いている。私たちは、日本がこのタイプの原子炉を作っている唯一の国であることを指摘したい。世界全体がこのタイプの原子炉を否定している。安いが故、危険なのだ」と警告した。この発言は、バルト国家での反ビサギナス原発キャンペーンに一層の拍車をかけた。


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