2024年11月22日(金)

Inside Russia

2012年10月19日

 日立がリトアニアに作ろうとしているのはABWRであって、福島第一原発4号機の原子炉BWRではない。日立側も「われわれが技術的に危険なものを輸出しようとしていると指摘するのは公正を欠いている」と反発した。

 ロスアトム幹部のこの発言の後、リトアニア政府は繰り返し「日本の原発は最高品質だ」と公言するようになった。

 ビサギナス計画がつぶれれば、ロシアは継続的にバルト国家に天然ガスを輸出することが出来るし、場合によっては、ベラルーシやカリーニングラード州の原発で余剰電力を売電することができる。日立製原発がビサギナスに建設されないことは、ロシアにとって多大な利益を生み出すことにつながるのである。

新政権の原発政策の判断は…

 そうして迎えたのが、10月14日の議会選挙と国民投票だった。ラトビアの国防相が「ロシアの勝利」と指摘したのは、こうした背景があったのである。

 国民投票は、今回、「国民からの政府への助言で、この結果をもとに今後の政策の参考にする」という位置づけだった。故に、鍵を握るのは次期政権がどのような政党の枠組みになるかである。

 比例代表の議席数70は全て確定したが、議席数71の小選挙区のほとんどは、全ての候補者が当選に必要な得票率に達せず、第一回投票で1位、2位になった候補者が今月28日に決選投票を行う。

 国民投票で62%が原発反対にまわったことをふまえ、議会選比例代表で1位に躍り出た野党・労働党のウスパスキフ党首は現段階では、判断を先送りする考えを明かしている。ロシア紙イズベスチヤのインタビューに「計画はやめない。設計作業は続けられる」と答えた。ウスパスキフ党首は国民投票に賛成票を投じ、労働党は今年6月、日立に建設優先権を与える国会決議で賛成側にまわっており、野党の中でも推進側にある。

 クビリウス首相率いる「祖国同盟・キリスト教民主党」の与党は下野し、労働党を中心にする連立内閣ができる見通しが高まっているが、新政権がビサギナス原発計画にどのような判断をするかは余談を許さない状況にある。バルト国家やロシア、ベラルーシ、EU、そして日立製作所がプレーヤーとなって、水面下で活発な駆け引きが行われていくことになりそうだ。


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