2023年12月3日(日)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年5月19日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「米共和党は『カルト集団』か?」です。共和党下院トップのケビン・マッカーシー院内総務は、同党ナンバー3のリズ・チェイニー下院議員(西部ワイオミング州)を解任し、トランプ派のエリス・ステファニック下院議員(東部ニューヨーク州)を起用しました。これに対して、共和党関係者の間にチェイニー氏を擁護し、ドナルド・トランプ前大統領との決別を求める新たな動きが出てきました。

 そこで本稿では、この新たな動きとはどのような動きなのか、そしてマッカーシー氏はチェイニー氏解任の先に何をみているのかについて述べます。

スミソニアンのナショナルポートレートギャラリーに飾られたトランプ前大統領の写真(AP/AFLO)

トランプと決別する新たな動き

 野党共和党の関係者5人が5月13日、米ワシントン・ポスト紙(電子版)に共同寄稿し、同党の過激な特定集団に対抗するために同盟を立ち上げたと宣言しました。その5人とは、チャーリー・デント元下院議員(東部ペンシルべニア州)、ブッシュ(子)政権のメアリー・ピーターズ元運輸長官、デンバー・リッグルマン元下院議員(南部バージニア州)、マイケル・スティール共和党全国委員会元委員長及び、クリスティーン・トッド・ウィットマン元知事(東部ニュージャージー州)です。

 彼等は現在の共和党に対峙する新たな組織を作るというのです。すでに150人以上の署名を得ました。

 デント元下院議員等は寄稿文で、「不幸にも共和党は恐怖心や嘘と私利によって道に迷い邪道に導かれた」と分析し、「多くの党員が党を離れて行った」と指摘しました。もちろん、「恐怖心」を共和党議員や支持者に植え付け、「嘘」の情報を大量に発信して「私利」を追求したのはトランプ氏です。

 その結果、「共和党離れ」が進んでいるのは事実です。31州とワシントンDCにおける20年の党派別登録者数の割合をみると、民主党は39.66%、共和党は28.87%、無党派は29.09%で初めて無党派が共和党を上回りました。ちなみに、04年は民主党が42.19%、共和党が32.79%、無党派が23.15%でした。04年と比較すると、共和党員は約4ポイント減少したことになります。

 しかも、21年1月6日に発生したトランプ支持者による米議会議事堂乱入事件後、西部アリゾナ州等で共和党員数が減少しました。トランプ氏と支持者が共和党員数を減らしている点は看過できません。


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