今回のテーマは、「バイデンが習に言及した本当の理由」です。ジョー・バイデン大統領は4月28日(現地時間)、施政方針演説である「一般教書演説」を行いました。そこでバイデン氏は、中国の習近平国家主席について繰り返し言及しました。どうして習主席に触れる必要があったのでしょうか。
その答えは一般教書演説の構成要素とその順番に注目すると見えてきます。そこで本稿では、演説の構成要素と順番及び内容からバイデン氏の意図、戦略並びに信念を読み解きます。
演説に関与した「2人の人物」
ホワイトハウスによると、今回の一般教書演説の原稿作成において2人の人物が主導的な役割を果たしました。
1人はマイク・ドニロン大統領上級顧問です。バイデン大統領と民主党系政治コンサルタントのドニロン氏との関係は40年以上になります。バイデン氏は長男のボー氏が15年脳腫瘍で死亡したので翌年の米大統領選挙出馬を見送りましたが、ドニロン氏が直前まで出馬の準備をしていたことを自伝で明かしました。
オバマ政権でドニロン氏はバイデン副大統領(当時)の顧問を務めていました。20年米大統領選挙ではバイデン陣営の主席戦略家を務めました。バイデン氏の参謀トップです。
ドニロン氏はバイデン氏の地元デラウェア大学にある「ジョセフ・R・バイデン公共政策管理学部」の幹部で、同大学のバイデン研究所の教授でした。兄弟はオバマ政権の大統領補佐官(国家保障問題担当)であったトーマス・ドニロン氏です。
もう1人はバイデン氏にとって初の一般教書演説の原稿を書いたインド系米国人で移民2世のビナイ・レディ氏です。レディ氏は、オバマ政権2期目(2013~17年)のバイデン副大統領(当時)のスピーチライターでした。20年大統領選挙においてもバイデン氏の演説原稿を書きました。
演説の構成要素と順番
ドニロン氏とレディ氏が深く関与した一般教書演説の構成要素と順番は以下のようになっています。
まず、バイデン大統領は政権発足から100日間における「成果」の強調から入りました。第1の成果として挙げたのが、100日間で1億回分の目標を超えて、2億2000万回分のワクチン接種を達成したことです。そして第2の成果として挙げたのが、3月に「米国救済計画」
次にバイデン氏は、「米国雇用計画」と「米国家族支援計画」を盛んに売り込みました。米国雇用計画では2兆ドル(約220兆円)規模の投資を行います。この投資には老朽化した道路や橋、鉄道のインフラ整備が含まれています。加えて、電気自動車の充電ステーションを50万カ所設置するという目標を掲げました。
一方、一般教書演説の目玉商品となった「米国家族支援計画」では、1.8兆ドル(約200兆円)を投資して子育て支援や単科大学の授業料無償化等を行います。バイデン氏はこの2つの計画の「セールス」に徹しました。
ここまでの演説の流れは想定内でしたが、この後で想定外のことが起きました。