海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年5月4日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「打倒中国」で結束

 続けてバイデン大統領は野党共和党との協議で難航している「ジョージ・フロイド警察正義法」、銃の規制及び移民問題に関して語らずに、外交政策に移ったのです。通常の一般教書演説では国内政策に大半の時間を費やし、その後で外交政策に触れて、最後に「核となるメッセージ」を発信して終了する構成になります。これがいわゆる「定番」です。

 ところがバイデン氏の演説は、最初に内政についてアピールし、一旦外交を挟んで、内政に戻るという構成になっていました。しかもバイデン氏は外交政策で、習国家主席について語りました。なぜここで中国をクッションに入れる必要があったのでしょうか。

 ドニロン氏がアドバイスをしたか否かは不明ですが、いずれにしてもバイデン大統領は「戦略的な構成」を選択したと言えます。演説で「習主席との電話会談で、衝突ではなく競争を歓迎すると伝えた」「中国が国営企業に補助金を出し、米国の技術や知的財産権を盗んで(米国の)労働者と産業を弱める不公平な貿易慣行を行っていることに対抗する」と、語気を強めました。

 さらにバイデン氏は、「衝突を始めるのではなく、阻止するためにNATO(北大西洋条約機構)と同様、インド太平洋地域においても軍事的プレゼンスを維持すると習主席に告げた」と説明しました。

 そのうえで、「米国は人権や自由に関与することから身を引かないと世界のリーダーに語ったと、彼(習主席)に伝えた」「基本的な人権が犯されたら米国の大統領は黙っていない」と、強気の発言を連発しました。

 これらの発言の意図は、中国に関して「強いバイデン」「強いリーダー」をアピールすることです。ただ、演説の構成の視点から述べると、異なった分析が可能です。

 バイデン氏は明らかに共和党保守派と民主党リベラル派が、「打倒中国」で結束できると読んでいます。つまり、「打倒中国」をクッションに入れて団結力を高めてから、バイデン氏が共和党から支持を得られていない「ジョージ・フロイド警察正義法」、銃の規制及び移民問題などの「難題」で協力を得たかったとみてよいでしょう。ここが今回の一般教書演説における見えざるポイントでした。

 要するに、バイデン一般教書演説は「成果」「セールス」「打倒中国」「難題」「核となるメッセージ」の順番で構成されていました。

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