海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年5月19日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

あの夢をもう一度

 では、なぜマッカーシー院内総務は来年秋の中間選挙におけるトランプ前大統領との協力にこだわったのでしょうか。トランプ氏の資金力と支持者の票に期待していることは間違いありません。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙のジェラルド・サイブ編集長は、マッカーシー氏にはトランプ支持者のエネルギーを生かして中間選挙を戦う意図があると分析しています。

 10年中間選挙で共和党は保守派の市民運動「ティー・パーティー(茶会)」の勢いを利用し、下院で63議席を上積みして多数派奪還に成功しました。当時、筆者は研究の一環として、南部バージニア州のジェリー・コノリー下院議員(民主党)の選対に入り、戸別訪問を実施していました。標的になっている家を訪問する度に、バラク・オバマ元大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)に対する有権者の「怒り」に直面したことを鮮明に覚えています。

 ティー・パーティーのメンバーは怒りを中間選挙で爆発させ、民主党議員を次々に撃ち落としました。コノリー氏は大接戦の末、ティー・パーティーが推薦した共和党候補に僅差で勝ちました。

 トランプ支持者の中に、ティー・パーティーのメンバーがいます。そこで、マッカーシー院内総務は20年米大統領選挙でジョー・バイデン大統領が不正を犯して勝利を収めたと信じているトランプ支持者の怒りを利用して、共和党下院多数派の奪還を狙っているとみてよいでしょう。

 議事堂乱入事件を「民主主義的行動」として正当化し、仲間の逮捕に怒りを表すトランプ支持者がいます。その怒りも中間選挙で民主党候補を撃ち落とすためのモチベーター(動機づけ要因)になり得ます。

 加えて、共和党のトランプ氏崇拝の勢いが増し、「カルト化」が一層進めば、党内の団結力が高まります。マッカーシー院内総務は10年中間選挙における共和党下院圧勝の「夢の再来」を願っています。

 ただ、共和党内のカルト化によって無党派層、同党中道穏健派及び郊外の女性の票が逃げる可能性が高まります。マッカーシー氏の政治的計算通りにうまく事が運ぶかはまったく不透明です。

  
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