今、日本には地方空港がひしめいている。様々な形態の空港をすべて合わせるとその数は100を超える。「オラが町にも空港を」ということで、地方自治体が採算度外視で量産した結果だ。航空会社の収益が厳しくなったこともあり、定期便が飛ばない空港も少なくない。そうした空港に香港や仁川からチャーター便などが就航、結果的に、香港や仁川といったハブに客を吸い取られるスポークの役割を果たす結果になっている。
成田と羽田の一体化を進め、より強力なハブにしていこうという取り組みがないわけではない。成田と羽田の交通網整備構想もその一環だ。
京成電鉄と京浜急行を結ぶ都営地下鉄浅草線の短絡新線を建設し、成田─東京駅─羽田を結ぼうという計画だ。成田─東京が37分、東京─羽田が22分で結ばれるというが、成田から羽田に移動しようと思えば1時間かかる。
いっその事、成田と羽田を結んでしまえと、両空港間をリニアモーターカーで直結させるという壮大な構想もある。東京湾の下をくぐる大深度地下のトンネルで両空港を結び、時速約300キロで走行すれば、所要時間は約15分という。09年に当時の松沢成文知事のもと、具体化に向けた報告書を神奈川県がまとめている。経済波及効果は2兆9000億円というが、試算された建設費は1兆3000億円と巨額だ。
私たちが見慣れた地図はメルカトル図法で描かれている。一見、ニューヨークから東京もシンガポールも距離がそれほど違わないように感じるが、現実の地球はまったく異なる。「正距方位図法」という距離と方位を正しく示す地図で見れば、日本は、北米からアジアへの途上にある。まさに「ゲートウェイ」なのだ。欧州からの距離を見ても、決して不利な位置にはいない。
つまり、東京の空港がアジアのハブになれないのは地理的に不利だからではなく、ハブ化戦略に失敗したからに他ならないのだ。巻き返しに向けて、戦略を練り、一気呵成に挽回しなければならない。
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