2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2021年7月2日

コロナ禍にも負けず
銀座、丸の内に新店舗出店

 短納期、低価格(初回1万9800円)でも「フルオーダー」を実現している、オーダースーツSADA(東京都千代田区、以下、SADA)は、コロナ禍においても新店舗を出店した。

コロナ禍の昨年6月、新たに出店した「オーダースーツSADA」の銀座店 (ORDER SUIT SADA)

 SADAは羅紗(らしゃ)の卸を起源として東京・神田で1923年(大正12年)に創業した老舗企業。途中から、縫製にも進出してテーラー向けにスーツを卸した。現社長の佐田展隆さんは、いつか継ぐことを意識しながら、まずは生地について学ぶことを念頭に置き、一橋大学卒業後、東レに入社した。しかし、風雲急を告げた。入社4年目に、父親から「帰ってきてほしい」と連絡が入った。「負債が溜まり過ぎて、銀行への新しい保証人として呼ばれたという状況だった」と、振り返る。

 それでも、80年代に中国で立ち上げた工場を活用すれば、フルオーダースーツでも低価格で販売できる。そうすれば若者から支持されるはずと、04年に直販店をオープンさせた。若者をターゲットに、インターネットを活用して情報発信を行い、徐々に顧客を増やすことに成功した。

 しかし、そんなときに大口の卸先だった百貨店が破綻したことで売り上げが大幅に下がり、せっかく出した利益も有利子負債の返済で消えてしまうという状況になった。08年、佐田さん親子は負債の免除と引き換えに会社から去ることになった。ところが3年後の11年、当時のオーナーから佐田さんに再登板の依頼がきた。決め手となったのは、一緒に直販事業を進めてきた若手社員にも「戻ってきてほしい」と言われたことだった。

 ここから佐田さんは本格的に直販をスタートさせた。12店舗から36店舗まで一気に拡大。それでも「スーツ以外のコストは徹底して下げる」というコンセプトのもと、路面ではなくビルの中に店舗を設けるなどして経費は徹底的に抑えた。「本物のオーダー」が支持され、現在では55店舗まで拡大。

 さらに、昨年6月に銀座、9月には新丸ビルに新店舗を出した。今回は打って変わって「高級」だ。英国やイタリアから生地を取り寄せ、平均単価は7~8万円に上がる。しかし、佐田さんは単なる高級を目指したわけではない。「お客様から〝勝負スーツ〟を作りたいという声をたくさんいただいたことがきっかけとなった。ただ、高ければなんでも良いということではなく、費用対効果を考えた商品づくりをしている」という。


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