スーツのことを知れば
もっとスーツが着たくなる
松屋銀座で長年スーツを担当してきた宮崎俊一さん。多くの上場企業社長のファッションアドバイザーを務め、業界では〝カリスマバイヤー〟と呼ばれる知る人ぞ知る存在だ。コロナ禍での変化として「スーツを着る機会が減ったことで、より一着にこだわる方が増えている」という。
宮崎さんは10年ほど前、松屋の中に「アトリエメイド」という自らが手掛けるブランドを立ち上げた。「日本全国に残る希少価値のある〝ものづくり〟の技術を絶やしてはならない」という思いからだ。ただ、いくら技術があっても、高級品ばかり作っていては事業としての持続性はない。宮崎さんは全国津々浦々の縫製工場を巡り歩き、「これはという、熱量のある人」がいれば、説得・議論して、自らも一日中ミシンの横に座り、どうすれば効率よく、安くできるか一緒になって考えたという。そのようにして集まった技術を結集して仕上げるのが「アトリエメイド」のスーツだ。
オーダースーツのことを「ビスポーク」と呼ぶが、これは「be spoken for(顧客のために話す)」ことが語源とされている。サイズはもちろん、使用される生地の来歴、ボタンの解説、そして顧客の職業、役職、用途、顧客の様々な話を聞きながらふさわしいスーツを決めていく。そして、この対話のなかで顧客もスーツに対する知識を深めることができる。アトリエメイドの顧客の一人は「ここでのスーツ代の半分は宮崎さんの話に払っているといっても過言ではない」と話す。
「どんなゲームでもルールを知らなければ楽しくない。それはスーツも同じ。最低限、スーツのルールを知ればもっと楽しんで着ることができると思う」と宮崎さん。
コロナ禍は、今まで無意識に着ていたスーツを見直すきっかけになっている。一方、メーカーにとってもこれまでの大量生産で生き残ることは困難だ。ユーザーが満足するストーリーを描くことで着てみたくなるスーツを生み出すことができるはずだ。
■資源ウォーズの真実 砂、土、水を飲み込む世界
砂
part I-1 〝サンドウォーズ〟勃発! 「砂」の枯渇が招く世界の危機
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土
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3 〝スーパーサイクル〟再来 危機に必要な真実を見極める眼力
水
part III-1 「枯渇」叫ばれる水 資源の特性踏まえた戦略を
2 重み増す「水リスク」 日本も国際ルール作りに関与を
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