2024年11月23日(土)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年11月5日

「カトリック教徒」としてのヒスパニック系?

 共和党の伝統的なヒスパニック系アウトリーチは、ヒスパニック系がカトリック教徒であることを重視し、人工妊娠中絶や同性婚に反対する文化保守的な価値問題で共感を訴える方法だった。共和党の「宗教保守」対策のスピンオフとしてのヒスパニック票対策である。そのため、ヒスパニック系対策の文脈で、経済政策を扱うことに慣れていない面も否定できない。

 片言のスペイン語を話すW・ブッシュはテキサス州を地盤としていることもあり、比較的ヒスパニック票に力を入れた共和党政治家だった。2004年の再選選挙では、側近のカール・ローブが同性婚などの価値問題を焚き付けて、民主党上院院内総務だったトム・ダッシェルなどの大物議員を落選させるムーブメントをつくり出したが、ヒスパニック票対策もその文脈で効果を発揮した。今回もオバマ大統領選が同性婚に賛意を示したり、「オバマケア」と呼ばれる医療保険改革法で避妊が適用範囲となる問題が起きたり、カトリック教徒を不安にさせる価値問題がないわけではない。

 しかし、「経済選挙」である今回、ヒスパニック系のアイデンティティは「カトリック教徒」であることよりも、雇用を欲する勤労者、あるいは中小企業(スモールビジネス)の経営者にあるとすれば、共和党による価値問題でカトリック教徒を引き寄せる神通力は限定的となる。

 他方で、プロテスタント系の福音派などに比べれば、カトリック教徒のモルモン教徒への違和感はさほど大きくはないとされる。筆者と親しいワシントンのカトリック系団体の関係者も「カトリック教会の大半はモルモン教を基本的に同じキリスト教だとは見なしていないが、だからといって、福音派原理主義ほどには気にしない。個人的には、大統領がモルモンであっても何でもあっても関係ない」と語る。

 信仰・価値問題が共和党ロムニー陣営に大きな「追い風」にも「向かい風」にもならないとすれば、投票行動は経済要因に収斂する可能性が高い。

サブカテゴリー別に支持傾向に差異がある
フロリダ州ヒスパニック票

 問題は州ごとの動向だ。重要接戦州の1つであるフロリダはロムニーとしては是が非でも勝利したい。フロリダ州のヒスパニック系有権者を対象にしたフロリダ国際大学の調査では(2012年10月10日から11日にかけて実施)、オバマ支持51%、ロムニー支持44%でオバマがリードしているが、「タンパベイ・タイムズ」「マイアミ・ヘラルド」による10月初旬の調査では、ロムニー46%、オバマ44%でロムニーがリードしていた。拮抗状態にあるのは間違いない。


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