今回の10月の世論調査でオバマは、2008年の得票率より上回っている。あくまで世論調査に過ぎないが、ロムニーはマケインの得票率をわずかに下回った。ちなみにオバマの2008年の67%のヒスパニック票獲得は画期的な数字で、2004年の民主党ケリー候補はわずか53%にとどまり、44%をブッシュに奪われている。
ロムニー陣営はキューバ系移民の多いフロリダで全国党大会を開催し、必死の巻き返しをはかってきた。筆者はヒスパニック系政治コンサルタントのジェーミー・エストラダ氏と再会して、共和党の動向について意見交換をした。『分裂するアメリカ』の取材で会って以来1年ぶりだ。
エストラダ氏は、ニューメキシコ州アルバカーキで共和党系の政治コンサルタントをしている。ニューメキシコ州はヒスパニック系人口が多く、知事は共和党のヒスパニック系女性知事のスザナ・マルチネスだ。エストラダ氏自身もヒスパニック系である(エストラダ氏の経歴については『分裂するアメリカ』2章参照)。代議員としてタンパの共和党全国党大会に参加するなど、2012年選挙には選挙ビジネスを超え、党員としても深く関与している。
エストラダ氏は全国党大会でヒスパニック系の政治家が注目を浴びたことは中長期的には効果があったと見る。
「多くのヒスパニック系の声が全国党大会の壇上から響いたことはとても有意義だったし、共和党にとってヒスパニック系アウトリーチが重要なのだという認識を内外に植え付けたと思います。ヒスパニックのコミュニティに手を差し伸べていかねばならないのです。さもなければ、共和党は今後、多数派には決してなれないのです。他方で、ヒスパニック系のメッセージの送り手は、共和党を育てるための存在であることをアピールする必要があります」
大統領令によるオバマ陣営の
部分的な移民向けキャンペーン
前述のように、オバマ大統領は政権1期目に包括的移民改革法案を実現できなかった。他方で、2012年6月に、唐突に不法移民の合法的滞在を一部認める大統領令を発表している。明らかに選挙向けの動きで、「6月危機」を乗り越える策とも批判された。しかし、大統領令の対象は、16歳未満で入国し30歳以下、5年以上滞在、高卒以上か軍経験有り。犯罪歴がないことを条件に2年更新となっているとはいえ、約80万人をカバーするとされる対象者の規模は大きい。ヒスパニック系の移民コミュニティには大きなメッセージとなったはずだ。
エストラダ氏はオバマの大統領令を一蹴した。「移民問題は大統領令では解決しません。パッチワークのようなプロセスになってしまいます。問題の解決にはなっていないのです」と述べ、マルコ・ルビオ上院議員の上院での共和党案のコンセンサス作りに期待を示した。