万が一、年末までに、財政再建策を巡る議会との折衝で何らかの合意に達することができなければ、米国経済に与える影響は甚大なものとなり、景気は再び後退してしまう。そのようなことがあれば、オバマ政権は2期目発足直後から、実質的に「レームダック」化することになる。つまり、米国経済はまだまだ厳しい状況に置かれているのだ。このような状況の下では、来年1月から少なくとも2014年の中間選挙までの間は、オバマ政権の最大の関心は「米国経済の回復」であり、そのために必要な諸政策に、持てる政治的力の大部分を費やすことになると見るのが合理的だろう。
無視できない外交は「中国」と「中東」
とはいえ、外交政策を全く無視できるわけではない。勝利演説でオバマ大統領は「中東の石油輸入依存からの脱却」に触れた。さらに、選挙期間を通じて、為替レート操作国及び米国の雇用の流出先としての中国に対する政策、特に対中通商・経済政策が何度となく議論の対象になってきている。このことから判断するに「中東政策」と「対中政策」が2期目の対外政策の重要課題になる可能性は極めて高いといえるだろう。
中東政策については、引き続き米軍撤退が続くイラク、アフガニスタン両国の安定をいかに維持するかをはじめ、収束を見せる気配のないシリア内戦、対イラン政策など、オバマ政権が1期目に頭を悩ませた問題がそのまま残っている。
加えて、リビア・ベンガジの米国総領事館襲撃事件を契機にイスラム教過激派集団による対米テロへの懸念が改めて浮上した。とりわけ、ベンガジの総領事館襲撃事件については、本件に関する情報をCIAが適切に政権内で共有していなかったのではないか、特に、ホワイトハウスまで情報がきちんと上がっていなかったのではないかという疑問が呈されており、内政にも影を落としている。大統領選終了直後の11月7日に、突如辞任を表明したデービッド・ペトレイアスCIA長官(元米中央軍司令官)の去就についても、「不倫」を理由にした辞任ではあるものの、ベンガジの総領事襲撃事件に関連する情報の取り扱いを誤ったのではないかという批判が政権内で強まる中で「更迭される前に自ら辞めたのでは」という捉え方もあるほどだ。
オバマ政権は昨年来、イラク及びアフガニスタンでの米軍による大規模な作戦が終了した後の安全保障政策に関して「アジア太平洋地域重視」路線を打ち出してきているが、中東でこのように不安定材料が多く残り、加えて前述のシリア、イラン、さらに長年の懸案であるイスラエル・パレスチナ間の和平問題も引き続き存在する中、米国は中東への関与を引き続き継続することになるという見方が支配的だ。