2024年12月14日(土)

CHANGE CHINA

2021年9月7日

憲政民主の実現を共に目指す

 中国における憲政民主の実現が、栄さんの掲げる中国の大きな課題だ。冒頭に述べたように、いわば、中国全体が西側の価値観と相容れない「異形の大国」となる中で、隣国である日本はどのような関係を築けばよいのだろうか。栄さんは「東アジアとは何か」という別の論文でも次のように述べている。

「東アジア再構築の可能性は、最終的には日中両国がほぼ同じ制度文明に基づくことで現実となる。両国の制度の差異と衝突こそが、両国が直面する多くの問題を解決できない主要な原因である。それゆえ、中国の制度転換の東アジア再構築における意義は大きい。両国の近代化はほぼ同時に始まり、ほぼ同じ目標、すなわち憲政民主の方式により国家の近代化を達成するというものだった。

 明治維新の日本は途中で軍国主義へと進んだが、戦後再び憲政民主の正しい道へと進んだ。だが中国は清朝を倒しアジア初の共和国を建国したものの、国内の戦乱や日本の侵略により、制度の転換を実現できず、現在の政治構造も憲政による根本的改造が必要である。東アジアの再構築は、憲政民主の枠組みにおいて、共同の政治文明に根ざすことで初めて可能となる」

 中国人として国を思う立場に基づきながら、人類共通の価値である憲政民主の実現を主張する、栄さんのような言論人の存在はますます貴重になっている。

 栄さんには海外にも多くの友人や支持者がいる。米コロンビア大学のアンドリュー・ネイサン教授もその一人で、栄さんとは訪米時にフィナンシャル・タイムズで対談を行っている。ネイサン教授は、その後出された栄さんの著書『新盛世危言』の序文で「中国の問題は総体的、長期的、制度的なもので、問題の解決は国家の政治制度の改革によってのみ解決可能だ、と栄氏は述べている」として、栄さんの意見に賛同している。近く同書の翻訳が日本でも出版される見通しで、栄さんの思想への理解が日本の読者の間でも広がることに期待したい。

(本稿は、筆者の個人的見解であり、所属組織を代表するものではない)

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Wedge 2021年9月号より
真珠湾攻撃から80年
真珠湾攻撃から80年

80年前の1941年、日本は太平洋戦争へと突入した。
当時の軍部の意思決定、情報や兵站を軽視する姿勢、メディアが果たした役割を紐解くと、令和の日本と二重写しになる。
国家の〝漂流〟が続く今だからこそ昭和史から学び、日本の明日を拓くときだ。


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