どうすれば経営者にファイティング・ポーズをとらせることができるか。経営に緊張感を持たせる世界的な手法は「コーポレート・ガバナンス」(企業統治)を効かせることだ。日本ではガバナンスというと不祥事を防ぐためのお目付役を置くという印象が強い。
確かに欧米企業のように利益を上げるために経営者が暴走するような風土ではブレーキ役が必要だが、日本企業に必要なのはむしろアクセル役。経営者にリスクを取らせ、利益を上げさせるために背中を押す役割が必要だ。その役割を担えるのは企業の利益が増えて得をする人、つまり大株主や投資家の代表ということになるだろう。企業の株を保有する年金基金や保険会社が企業の取締役会に入っていって、もっと経営者にプレッシャーをかけるべきなのだ。
会社法制を見直す法務省の法制審議会会社法部会は、昨年、会社に1人以上の社外取締役を義務付ける案を示した。ところが、経団連や全国銀行協会などが強硬に反対。結局、今年8月に義務付けは見送られた。社内出身者ばかりの取締役会に、外部の目を入れることを徹底的に嫌う日本企業の風土が改めて浮き彫りになった。
年金も生命保険も、資金を拠出しているのは、この記事をお読みの皆さんだ。きちんと利回りを上げるよう基金や保険会社に圧力をかければ、それが企業への圧力となり、経営者がファイティング・ポーズをとり、企業の業績が上がり、日本経済が成長する。そうしたガバナンスを機能させることが問題解決の第一歩なのだ。
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