2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月13日

 最後に、北東アジアの敵意の克服に際し、朝鮮半島での不信と対立の緩和が重要な要素である。北朝鮮の核問題の解決は、平和な北東アジアに不可欠である。北朝鮮指導部が、非核化、国民の生活向上、経済発展の方向に向かうように促すことは重要である。私は、韓国の世界各国とのつながりに加え、協力的な米中関係、日中韓の3者協力が、北朝鮮と世界との信頼への触媒になると考えている。韓国は、抑止力は維持しつつ、南北関係の正常化に指導力を発揮し、北朝鮮が国際社会の責任ある一員になるように努力すべきである。

 最近、ミャンマーは、国際社会に参加し、地域の安定を強化すると言う正しい決定をした。北朝鮮も、朝鮮半島と北東アジアで信頼の橋を築くべきである。もし北朝鮮が正しい決定をするならば、世界で最後の冷戦国境は変わらざるを得ない。これが「アジアの逆説」を克服し、新しい北東アジア、アジアの世紀を呼びよせる道である。これが韓国、北東アジアのための私のビジョンである、と述べています。

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 この朴候補の論説は、日韓関係については、あまり歓迎できるものではありません。歴史問題を強調し、日本がまだ過去を清算しきっていないと言う立場に立っています。大統領選挙前に、それ以外のことを言うのは難しいでしょうが、「正しい歴史認識」と言うものを振り回されても困ります。歴史は科学であるよりも物語で、価値観を織り込んだものです。慰安婦の問題を含め、請求権問題は、完全、最終的に父親の朴大統領時代に解決されています。いまさら歴史問題を蒸し返すのは、日韓関係のためにも良くないでしょう。金大中政権時代に、もう歴史問題はやめにして、未来志向で日韓関係を考えましょうとの合意もあったはずです。

 また、朴候補は、中国の軍事的台頭について多くを語っていませんが、どれほどしっかりした対中認識を持っているか、心もとない気がします。中国の台頭と米国のアジアへの軸足移動は相互に排除し合わないと言うのは、甘い対中認識が根底にあるのかもしれません。

 領土問題に関して、李明博大統領は、最初の頃は良かったのですが、最後の段階では、韓国が不法占拠をしている竹島を訪問して、日韓関係を悪化させてしまいました。それから、朴候補が提唱するヘルシンキ合意ですが、これは領土の現状維持を大きな眼目とするもので、かつてソ連はアジア安保体制と言う形で提案してきました、北方領土や竹島問題を抱える日本は、もちろんこれには乗れません。

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