2024年4月25日(木)

J-POWER(電源開発)

2021年9月20日

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2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロに。日本を含む国際社会が掲げる大目標に向けて電力会社をはじめとするエネルギー産業はどう対応し、カーボンニュートラルに導くのか。再生可能エネルギーと水素を軸に早期の実現を目指すJパワー(電源開発)の戦略を聞いた。
 

BLUE MISSION 2050
近未来戦略が目指すもの

菅野 等(かんの・ひとし) 電源開発株式会社 取締役常務執行役員 1984年筑波大学比較文化学類卒業、電源開発入社。設備企画部長、執行役員開発計画部長、同経営企画部長などを歴任し、2019年より現職。

——今年2月、発電事業のカーボンニュートラル実現を目指す経営戦略「J-POWER BLUE MISSION 2050」を発表されました。どのような狙いがあるのですか。

菅野 電力供給事業者としてJパワーグループがこれまでの70年の歴史で積み上げてきた技術と経験値をもとに、エネルギーの脱炭素化、すなわちカーボンニュートラルに向けて本気で取り組んでいく道筋を示したものです。生命の源である碧い地球、そこに生きる人類の持続可能な生存環境を守りたい、そんな想いから「BLUE MISSION」と名づけました。

 気候変動に対する危機感が世界レベルで高まる中、温室効果ガス削減のためにあらゆる努力を払うことは、化石燃料を消費しCO2を排出する事業者として当然の責務です。当社においても議論を重ね、CO2排出量ゼロ、いわゆるゼロエミッション達成を可能にする事業構造への転換を加速させることとしました。いわば「CO2フリー電源ポートフォリオ」の確立です。

 折しもそうした過程で昨年10月、菅義偉首相が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると宣言し、年末には政府から脱炭素化を経済成長に結びつけるグリーン成長戦略が発表されたのを踏まえ、当社からの決意表明となりました。

風力発電の設備出力規模は国内第2位。運転中の22地点に加え、更新工事や新規建設も進んでいる。写真:くずまき第二風力発電所

——カーボンニュートラルへの道筋とのことですが、具体的にはどのような青写真を描いていますか。

菅野 まず再生可能エネルギーの開発を加速させること、これを強力に推し進めます。当社はもともと戦後復興期の旺盛な電力需要に応えるため、大規模水力電源の開発を使命に発足した事業体で、当社の軌跡=再エネ開発の歴史といっても過言ではありません。風力発電の開発にも国内でいち早く着手し、水力と風力は現在ともに設備出力規模で国内シェア2位に位置しています。さらに地熱発電の実績も含め、これらの開発・運転・保守を通じて得られた知見を土台に、将来の再エネの主役とも期待される洋上風力の新規開発も積極的に進めていく計画です。

 ただし、新規電源の開発には時間もコストもかかります。そこで、当社のもう一つの主力事業である石炭火力発電の資産を生かし、老朽化した設備を順次フェードアウトする一方、高効率化が望める設備には付加価値を与えてCO2フリー水素発電設備へと置き換えていく方策を立てています。

*1 2017-2019年度3カ年平均実績比 *2 電⼒ネットワークの増強はJ-POWER送変電の取り組み *3 2017年度比 *4 将来的なCO2フリー水素発電も視野に入れた、カーボンニュートラル実現に向けた取り組み(商標登録出願中)。 写真を拡大

 こうした事業を多面的に展開することで、2030年までに当社の国内発電事業によるCO2排出量を現在より40%削減し(*)、2050年には実質ゼロとするロードマップを策定しました(図参照)。この時点で、カーボンニュートラルが実現します。

*2017〜2019年度3カ年平均実績比

 

「創造的価値変換」で社会実装を早く確実に

——この4月に発表した中期経営計画にもさらに明確なアクションプランが示されています。ロードマップの中での位置づけはどのようになりますか。

菅野 これは、J-POWER BLUE MISSION 2050に基づきカーボンニュートラルに挑戦していく第一歩として、今後2023年度までの3カ年で取り組む課題を明らかにしたものです。脱CO2は一朝一夕でなし得るものではありません。また、そこに至るにもさまざまな方策が考えられます。その多様な可能性を探りながら、実現に向けた足掛かりを確実に得るための、非常に重要な初動期であると位置づけています。

 具体的には、(1)CO2フリー電源の開発加速化、(2)既存資産による新たな価値創造(アップサイクル)、(3)新たな領域への挑戦、(4)事業基盤の強化、この4つを柱に行動を進めます(図参照)。

——「加速性」と「アップサイクル」を特に重視していくことはBLUE MISSIONにも書かれています。アップサイクルとは何でしょう?

菅野 すでに持っている経営資源を有効活用し、高付加価値なものへと再構成することで、迅速かつ経済的に新しい価値を生み出していくことです。気候変動対策は待ったなしの状況ですから、可能な限り早く着実に、できるだけ低コストで効率よく前進させることが国際社会の願いです。であれば、新規に設備を導入するだけでなく、既設のもので生かせるものは積極的に価値変換を図っていきたい。

 そうした考えで、先ほども触れた石炭から水素への置換だけでなく、再エネを含むすべての既存資産でアップサイクルを検討します。

 例えば、高経年化が進む大規模水力設備では最新式の水車や発電機によるリパワリングが進んでいますが、これは出力増強に加え、激甚化する自然災害リスクにも対応するものです。また、余剰時の電力で水を汲み上げておく揚水式発電設備の価値向上は、気候や時間帯に左右されて出力調整が難しい再エネ発電の弱点を補う蓄電池機能の強化につながります。風力も同様に、20年前の初期設備と現在とでは風車の規模にも雲泥の差があり、建て替えにより風資源をより有効に活用できます。

——実現可能性と、早期に実装できることを優先するわけですね。

菅野 はい、カーボンニュートラルを画餅に終わらせるわけにはいきません。だからこそ既存資産を活用することが重要ですし、我々が培ってきた総合技術力というものの出番があると思っています。

 総合力というのは、水力、風力、地熱、火力、送変電などを網羅する事業バランスであると同時に、燃料調達から設備の立地、建設、運転、保守に至る統合力でもあります。それらのバックボーンがあればこそ、CO2排出量4割削減のマイルストーンが現実味を帯びるのだと自負しています。