2024年7月15日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2012年12月14日

――そういった仕事のない状況だとやはり他の土地に出て仕事を求めるしかないわけですね。東京へ出ることのメリット・デメリットについて教えてください。

著者の石黒格氏 (撮影:編集部)

石黒氏:青森では大学・大学院卒の若者の約半数が進学や就職を機に東京へ出ています。本書のもとになった調査によると、大卒の子たちには経済的利益が間違いなくあります。しかし、高卒の子たちに関しては、移動による経済的利益は少ない傾向にあります。

 ただ、本書の第8章で弘前大学の山口恵子先生が大都市に就職した工業高校卒業生に聞き取り調査をしたように、青森にいてはできないような若干レベルの高い仕事を東京では経験できる可能性は高まります。

 短期的なデメリットとしては故郷を離れることでしょうか。私はこの調査を始める前は、東北の若い子たちは、東京で孤立して暮らしているのではないかと思っていました。ですが、実際に調査を始めてみると、東京に出た東北出身の若い子たちの半分くらいがすぐ会える範囲に友人がいると答えています。

 ただ、このような調査だとどうしても東京に残っている人たちからしか回答を得ることができない。そうすると深刻な問題を抱え、地元に戻ってしまった人たちの言葉を聞き取れない可能性はあります。

 そうだとしても東京へ出るメリットは大きいので、一度は出たほうがいいのではないかと。なによりも故郷という帰れる場所があるわけですから。

――そうして東京へ出た若者にとって、ローカル・トラックの果たす役割が大きいと本書では指摘されていますが、まずローカル・トラックとはなんでしょうか?

石黒氏:ローカル・トラックという概念は大阪大学の吉川徹先生が提唱しています。トラックとは、水路のことで、水路には壁面があり、後ろから水が流れてきますので、水路から逃れようにも逃れられない。つまり、一見その人が生まれや属性によって進路を自由に選んでいるように見えるけれど、その進路自体がある型に定められていて、自由に選んでいるつもりでも実はその型にはまっていることを言います。

 吉川先生の著書『学歴社会のローカル・トラック』(世界思想社)では、それぞれの地域で、その地域出身の若い子たちが自由に進路を決める際にいくつかの型に収斂していくことを指します。


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