2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2012年12月14日

 そして先輩たちとお国言葉で話し、愚痴も言える。お国言葉で話せるか話せないかというのは心の安定にとっても大きな問題ですからね。そういう寮だとわかっていれば、高校の先生も安心して送り出すことができるのです。

 このようにそれぞれが自由に進路を選んだとしても、いくつかの型に収斂していく。それをローカル・トラックと呼びます。

――東京へ出る若者のなかでも、特に東京圏の大学に進学し、経済的な利益を一番多く受ける若者は、実家がある程度裕福であるかどうかがどうしても関わってくるという現実があるわけですが。

石黒氏:日本では高等教育の分散化政策がありますから、各都道府県に国公立の大学が必ずひとつはあります。そこで最低限のレベルは保証されています。しかし、偏差値で言う東京の上位の大学の学生と競争すると厳しいのが現実です。ですので、たとえば奨学金制度を充実させたり、本書では、せめて質の面で地方の大学をテコ入れしてほしいと提案しました。そうすることで優秀な人材が育つと、その人材を求め周辺に企業が進出してくる可能性もあります。それは地域経済の活性化につながります。

――他方でグローバル化する世界の中で、日本人の若者は他の地域に移動しないと指摘されます。実際に、青森の若者と接し、地元志向が強いと感じることはありますか?

石黒氏:確かに、青森の若者は「東京は怖い」というイメージを持っていたり、地元志向が強い若者もいます。ただ、彼らは東京やディズニーランドへ遊びに行ったりはするのです。つまり、「東京は遊びに行くところで、自分が生活することは想像できない」と思う若者も少なくないのかもしれません。

 若者の地元志向の問題は難しくよくわかっていないところが多いのですが、「移動する必要がない」と感じている人たちがいるのが、ひとつの理由かもしれません。昔のほうが移動する若者が多かったのだとしたら、それは生活の差が大きかったからではないでしょうか。高度経済成長期を境に都会が文化的にも経済的にも豊かになりました。こうなると、東京へ行かなければチャンスがなかった。


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