Wedge SPECIAL REPORT

2021年10月11日

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「Wedge」2021年7月号では、特集「資源ウォーズの真実 資源ウォーズの真実 砂、土、水を飲み込む世界」で、現代文明を支える「砂」資源の争奪戦の模様を伝えております。ここでは、好評だった日本における砂資源の現状を伝えるパートを公開します。2021年7月号の特集記事は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。

 国土の狭い日本だが、「海岸総延長」で見ると、世界6位の3万5307㌔メートル(以下、㎞)と、米国の1万9924㎞や中国の1万4500㎞を大きく上回る。そうした中で英科学誌『ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)』に掲載された論文によると、「気候変動と海面上昇が現状のまま進行すると、世界の砂浜の半数が2100年までに消滅する」(2020年3月3日AFP配信)という気になるニュースが流れた。日本の海岸線はどうなっているのだろうか?

 日本では1999年に「海岸法」が改正され、それまでの津波、高潮、波浪などによる海岸災害からの防護中心から、防護・環境・利用をミックスした形で海岸管理がなされるように改められた。そうしたなかで進められているのが「養浜(ようひん)事業」だ。

 昨年7月から千葉県の九十九里浜では30年をかけた壮大なプロジェクトがスタートした。全長60㎞を誇る九十九里浜では1960年代から最大の場所で100㍍汀線(ていせん)(=海面と陸地の境)が後退した。このため、今後30年間で海岸の幅40㍍を維持していくためのプロジェクトだ。

 九十九里浜は北端の屛風ヶ浦と南端の太東崎によってお椀のように囲まれている。この海食崖(かいしょくがい)と川から「砂」が供給されていた。ところが、崖侵食の防止工事や、河川整備が進んだことによって逆に砂の供給が減少してしまった。これによってそれまで36カ所あった海水浴場が2018年には18カ所に減少した。

 今後の養浜事業では、漁港に溜まった砂を回収するなどして、北九十九里で年2万立方㍍、南九十九里で7万立方㍍の砂が投入される。また、先がT字型になった「ヘッドランド」と呼ばれる人工の岬を設けることによって侵食を防ぐ。

「ヘッドランド」を設置するなどして養浜が進められる千葉県の九十九里浜。砂浜を守る努力は実るのか…… (KYODO NEWS)

 この他、神奈川、佐賀、宮崎、鳥取、石川県など全国各地で養浜事業が行われている。

ピークから需要減るも
砂供給の先行きは不透明

 コンクリートの骨材として使用される砂だが、需要のピークはバブル真っ只中の1990年度で、9億4900万㌧に達したが、その後、需要は減り続けて16年度には、3億6800万㌧となった。砂の供給別に見てみると、67年度には河川からの砂が供給の44%を占めたが、その後減り続けた。同様に山、陸、海からの供給も減った。かつては海砂の採取が行われていた瀬戸内海では、環境に配慮した条例などによって現在は基本的に採取が行われていない。輸入に関しても90年度には50万㌧を超えたが、20年では約8万㌧と、大きく減少している。

 現状では、国内の供給で砂は足りているように見えるが、「そう楽観してもいられない」と、ある業界関係者は打ち明ける。というのも、ここ数十年にわたって大きく供給を伸ばしているのが砕石だからだ。これは石を砕くことによって、いわば人工的に砂を作り出したものだ。だから「天然の砂と違って、機械で石を砕く必要があるので、どうしてもコストアップ要因になる」(同)。

 さらに、米国を中心にシェールガス・オイルの開発が進んだが、フラッキング(水圧破砕法)という特殊な技術を使うため、採掘コストが上がってしまう。同じことが砕石や砂の採取でも生じている。

 例えば、砕石を行うにしても条件の良い場所が減っている。また、人里離れた場所で行おうとすれば、そこにたどり着くまでの道路を整備するなど余分な費用が必要となる。砂の採取で言えば、かつて川が流れていた場所を掘り起こすことで川砂を採取することは可能だが、それを埋め戻すための費用が必要となる。「経済効率性、安定供給という面を含めて、国内の良い場所は全て掘りつくした」(前出の業界関係者)という状況にあるのだ。

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