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2021年10月13日

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国際通貨基金(IMF)は12日、世界経済見通しを発表し、2021年の成長率予測を5.9%へと下方修正した。新型コロナウイルスのデルタ株の影響により、ほとんどの富裕国で景気回復が弱まっていると指摘している。

IMFはまた、イギリスやアメリカなどで今後数カ月間はインフレが「高止まり」するだろうとし、各国の中央銀行は警戒する必要があると、BBCに述べた。

IMFは先進国(特に米国、日本、ドイツ)の2021年の成長見通しを下方修正した一方で、来年はほとんどの国の経済が堅調に成長していくとした。

ただ、より貧しい国々では景気が後退する可能性があると説明した。

IMFはこうした中、経済見通しとは別に、データの不正操作スキャンダルに巻き込まれた同基金のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ専務理事の続投を決議した。

ゲオルギエヴァ氏をめぐっては、世界銀行の最高経営責任者(CEO)だった頃に、スタッフに圧力をかけて中国に有利になるようデータを改ざんさせた疑惑が浮上した。同氏は疑惑を強く否定していた。

リスクの増大

世界経済は2020年に急激に縮小したが、2021年前半には各国の社会活動の再開を受けて堅調に回復した。

しかしIMFは、最新の世界経済見通しの中で、従来株より感染力の強いデルタ株が日常への「完全な回復」を阻止し、その「勢いが弱まった」と指摘した。

IMFのチーフエコノミストのギタ・ゴピナス氏は、最大の問題の1つは高いインフレ率で、特にイギリスでは3.2%、アメリカでは5.3%だとした。

「需要と供給のミスマッチ」が一因だが、イギリスの場合はガソリン価格の高騰も影響していると、ゴピナス氏は説明した。

また、インフレはほとんどの国では2022年半ばまでに、イギリスでは2023年までには安定するだろうとした。一方で、各国の中央銀行は「何が起きているのか、絶対に油断すべきではない」と述べた。

ゴピナス氏は、健康リスクやサプライチェーンの混乱が続いていることが、経済回復のスピードが減速している要因だとし、「経済見通しに対するリスクが高まっている」と警告した。

成長の鈍化

IMFは2021年の世界成長率予測を5.9%へとわずかに引き下げた。一部の富裕国の成長率の下げ幅はさらに大きくなるとしている。また、以下の予測をした。

  • 世界最大の経済大国であるアメリカの今年の経済成長率は、IMFが7月に予測した7%から6%に下方修正
  • 世界第3位の日本と第4位のドイツの経済成長率はそれぞれ2.8%から2.4%、3.6%から3.1%に下方修正

イギリスの経済成長率については、以前の予測(7%)から6.8%に低下する見込みだとした。

一方でIMFは、ほとんどの先進国ではサプライチェーンの問題が改善されることで、来年にはパンデミック以前の成長トレンドに戻り、2024年には成長率が約1%上回ると予測している。

中国を除く新興国・途上国の経済成長は後退し、2024年までにはパンデミック以前の予測を5.5%下回る可能性があるという。

ゴピナス氏は、「こうした差は、『新型ウイルスワクチンにおける大きな格差』と政策支援における大きな相違の結果だ」と述べた。

「先進国では60%以上の人がワクチン接種を完了し、一部の人は追加接種を受けている。その一方で低所得国では約96%の人がワクチンを接種していない」

ゴピナス氏は、これらの国の生活水準への打撃は今、「はるかに大きく」なっているだろうとBBCに述べた。

財政政策についてIMFは、各国はインフレ抑制と経済回復のための十分な刺激を与えることとの間で、うまく立ち回らなければならないとした。

IMFによると、パンデミック対策の緊急支出により、多くの国の債務が記録的水準に達しており、雇用もパンデミック以前の水準を大幅に下回っている。

データ不正操作疑惑

IMFはこうした中、データの不正操作スキャンダルに巻き込まれた同基金のゲオルギエヴァ専務理事の続投を決定した。

世界銀行は16日、法律事務所ウィルマーヘイルが世界銀行の理事会のために作成した、報告書「ビジネス環境の現状」2018年版で、中国のランキングを不正に引き上げていたとする調査報告を公表した。世界銀行CEOだったゲオルギエヴァ氏らが、スタッフに「不当な圧力」をかけてデータを操作させたとされる。これは、世界銀行が中国政府に大規模な増資を求めていた時期と重なる。

報道によると、フランスをはじめとする欧州各国政府は先週、ゲオルギエヴァ氏の続投を支持。アメリカと日本の当局はこの疑惑についてより徹底的に検証することを求めた。

ジャネット・イエレン米財務長官は11日、世界銀行の報告書は「もっともな」懸念をもたらしたが、「さらなる直接的な証拠がない限り」IMFの指導者を交代させる根拠はないと述べた。

ゲオルギエヴァ氏は「今回の件は、私個人にとって明らかに難しい出来事だった。しかし、世界銀行やIMFなどの機関の独立性と健全性に対する揺るぎない支持と、これらの組織が設立された価値を守るために尽力するすべての人々への敬意を表したい」と述べた。

(英語記事 Nations must be vigilant about price rises - IMF

提供元:https://www.bbc.com/japanese/58893399

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