2022年12月10日(土)

Wedge OPINION

2021年10月22日

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堀 成美 (ほり・なるみ)

感染症対策コンサルタント

神奈川大学法学部、東京女子医科大学看護短期大学卒業。国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)修了。聖路加看護大学助教、国立国際医療研究センター感染症対策専門職などを経て現職。国立国際医療研究センター国際診療部客員研究員。

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吉峯耕平 (よしみね・こうへい)

弁護士

東京大学経済学部卒業。日本医事法学会、一般社団法人日本医療情報学会、デジタル・フォレンジック研究会などに所属。第一東京弁護士会総合法律研究所IT法研究部会前部会長、国立国際医療研究センター臨床倫理委員会委員、司法改革推進センター委員などに就任。

[執筆記事]

ワクチン接種の最終フェーズ
打ちたい人が常に打てる体制を

 

──国民の半数以上がワクチン接種2回を終えたが、さらに接種率を上げるために必要なことは(10月21日現在:1回目76.0%、2回目68.3%)。

 ワクチン接種が普及したからこそ、最終フェーズをどう工夫するかは重要だ。そのためには、「打ちたくないと感じている人」を心変わりさせるよりも、まずは「打ちたいのに打てていない人」の障害を取り除いてあげることが有効だ。例えば東京都港区では、会社員や学生の接種を促進するため、毎週金曜日に午前0時まで接種ができる『週末ミッドナイト接種』を9月17日より開始した。仕事や授業の都合で、従来の接種終了時間(午後6時30分)に間に合わなかった人も参加でき、副反応が出たとしても、翌日の土曜を静養に充てることができる。

 その他にも交通アクセスの良い場所に接種会場を設置するなどし、可能な限りワクチン接種を受け易い環境を作ることが大切だ。

吉峯 政府は「ワクチン・検査パッケージ」をはじめ、ワクチン接種者への行動制限緩和を検討している。まず、行動制限は最小限でなければならない。ワクチン接種の有無により感染リスクが大きく異なるのなら、接種者を未接種者と同様に、一括して扱うことは過剰な制限となり許されない、というのが基本的な考え方だ。当然、未接種者は相対的に不利益を被ることになるが、一種の「愚行権の行使」であり、それも個人の権利だ。他方、ワクチンを打ちたい人が確実に接種できる体制を維持することはとても重要だ。

 未接種者への伝え方も工夫の余地がある。接種者が増えるにつれ、ネットやSNSでは未接種者を攻撃する動きもみられるが、ワクチン接種に対して様子をみるといった慎重な行動は決して非難されるべきものではない。

 そういう人に対しては、日々更新されるワクチン接種状況をデータで伝えたり、追加のワクチン接種機会を「救済措置」ではなく「セカンドチャンス」と言い換えたりするとよい。高齢者への3回目接種も検討されているからこそ、未接種者に取り残されたような気持ちにさせないよう配慮したい。

──ワクチン接種が進むにつれ、企業や経営者が気をつけるべきことは。

 基礎疾患を持つ患者に対応する医療従事者のように、本人の感染がすぐに誰かの命を脅かすような職種でなければ、ワクチンを打つか打たないかの最終的な判断は本人の意思に委ねられるのが妥当だろう。だからこそ企業は危機管理のために、従業員のワクチン接種の有無や職場ごとの接種率について把握し、その状況に応じて必要な感染対策を講じる必要がある。仮に職場でクラスター感染が発生した場合に、保健所は当然、各従業員のワクチン接種状況について確認することになる。


吉峯 「ワクチン接種歴については要配慮個人情報だから取得できない」といった声もあるが、雰囲気で萎縮しているだけで、法的な根拠はないと思う。詳細な法律論は割愛するが、従業員や取引先の健康を守ることは企業の重要な責任であり、その目的のために社内のワクチン接種状況を把握することは必要だし、可能と考えている。もちろん、関係のない目的に使ったり、未接種者に不当な不利益を与えることは許されない。

 本来の有給休暇とは別に「ワクチン休暇」を新たに設ける企業もみられるようになった。この制度を活用すれば、従業員のワクチン接種を支援しつつ、休暇申請によって接種状況が一目で分かるなど、経営者と従業員双方にメリットが生まれる。

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