2022年12月10日(土)

Wedge OPINION

2021年10月22日

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堀 成美 (ほり・なるみ)

感染症対策コンサルタント

神奈川大学法学部、東京女子医科大学看護短期大学卒業。国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)修了。聖路加看護大学助教、国立国際医療研究センター感染症対策専門職などを経て現職。国立国際医療研究センター国際診療部客員研究員。

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吉峯耕平 (よしみね・こうへい)

弁護士

東京大学経済学部卒業。日本医事法学会、一般社団法人日本医療情報学会、デジタル・フォレンジック研究会などに所属。第一東京弁護士会総合法律研究所IT法研究部会前部会長、国立国際医療研究センター臨床倫理委員会委員、司法改革推進センター委員などに就任。

[執筆記事]

「2類」から「5類」で
医療現場はどうなる?

──緊急事態宣言の解除に伴って、国民への行動制限はどう変わるのか。

吉峯 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の下では、事業者が要請に従わない場合、命令や公表ができる。宣言や措置が解除されれば命令や公表はできないが、要請自体は可能である。いずれも任意の要請で、罰則もない。日本のこういった仕組みは一種の「ソフトロー(soft law)」といえる。

 任意の要請による行動制限という仕組みには、メリットとデメリットがある。メリットは、状況に応じて柔軟に対策を変えることができ、人権制限としても程度が弱いところだ。デメリットは、「国が責任ある対応を取らなくなるのでは」という疑問が生じること、強制力がないことで無視する人が増えてくると、守っている人に不公平感を与えることだ。行動制限は最小限でなければならないから、細かいルールを決めるよりも、考え方を共有して現場で考えられるようにすべきだ。最低限守るべきポイントは罰則で担保することも必要かもしれない。

──法律の見直しについて、現在感染症法の指定感染症のうち、2類相当に指定されている新型コロナを、インフルエンザと同等の5類感染症に引き下げるべきだ、といった意見もある。

吉峯 まず、法改正によって新型コロナは「新型インフルエンザ等感染症」という類型に位置付けられているので、5類には簡単に変更できないのではないか。2類と5類を比べると、2類感染症の方が、法律的にみればできることが多い。例えば、2類感染症患者であれば「入院勧告」ができるが、5類ではできない。

 2類感染症の場合、できることも多いが、それに伴って医療機関が〝やらなければならないこと〟も多くなる。保健所への発生報告についても、5類は発生から7日以内に発生数のみの報告(麻疹・風疹をのぞく)だけでよいのに対し、1類から4類については氏名や住所など、感染者の個人情報も全て詳細に、かつ直ちに報告しなければならず、現在ほど感染者が増えれば医療機関にはかなりの負担となる。

 新型コロナを5類に引き下げても工夫の余地はある。例えば、5類感染症の中でも「水疱瘡」については入院者のみ詳細報告が必要と定められている。この仕組みを準用すれば、新型コロナ患者も入院が必要な重症患者のみ詳細報告の対象とし、軽症者については数のみの報告とするか、感染動向をみるために一部地域のみサンプルで詳細報告とする形式をとればよい。

吉峯 国際的にみれば、コロナ感染者が増加しても属性情報を含めた全数把握を続けている国も多いと聞く。

 そういった国はやはりデジタル化が進んでいて、報告作業が効率化されている。一方で、日本ではいまだ紙やFAXを用いた報告が一部残っているため、負荷がかかっている。

吉峯 コロナに限らず、デジタルで医療情報を扱う基盤が平時から整備されていない。医療機関はFAXでしか陽性者の届出ができないのもその一例だ。普段できないことは緊急時に急にできるようにならないので、平時から整備を進めなければならない。

 また、2類感染症では治療費は全額国費で賄われるが、5類感染症になればその他の病気と同様に3割負担となる。これは新規のコロナ患者が不利益を被るわけではなく、あくまで優遇措置が解消され、その他の取り扱いと同じになるということだ。ちなみに、コロナ対応にあたる医療従事者への特別手当についても10月を目途に解消される予定だ。

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