プーチン一家の情報は今も昔もトップシークレットで、近年、結婚したとされる2人の娘たちがどんな暮らしを送っているかは一切、明らかになっていない。今年で60歳になったプーチン氏は孫がいるかどうかは答えないまま、司会役のペスコフ大統領報道官が「では次へ」と促した。
私はいずれ退陣する
反体制派が退陣を要求する大統領の任期についても答えた。次回選挙は2018年に迎える。
「国を誰に委託するかは私の仕事ではない。市民の仕事だ。私は遅かれ早かれ、大統領の座を退く。だれが後任になるのかを心配している。まったくの皮肉なしで言うが、私は将来の大統領について、私の時代よりも成功し、幸運に恵まれることを心から願う。私はロシアが好きだから」
この記者会見には、広大な領土に多様な民族が暮らす各地方のジャーナリストもやってくる。彼らは、プラカードに目立つようなメッセージを書き込み、自分に質問を当ててくれとプーチン大統領や司会者にアピールする。質問にはそれぞれの地域の特色や問題点がにじみ出ていて、ロシア社会を理解する上で非常に良い教材になる。そして、地方の記者にとっては、質問の様子が全国中継され、故郷に錦を飾る晴れの舞台となる。
APECが行われたウラジオストクの「ナロードナイエ・ヴェーチ」紙のマリーア・サラビエンコ編集長が質問に立ったときのことだ。編集長はハリセンボンの近藤春菜さんに似た風貌だが、親しみやすそうな笑顔は一切見られず、最初から対決姿勢でプーチン大統領に迫った。
「私は、いつもあなたのことを紙面で批判しているのよ。私のことを知っているでしょ」
「地方紙なので知るわけがない」と思った周囲の記者から失笑が漏れる。大統領も強制されたように「知っている」と述べ、「全ての記者が私のことを批判しているからね」と付け加えた。
ウラジオストク編集者のプーチン批判
ウラジオストクではAPECが行われたために、ロシア全土でも有数の開発先進拠点となった。編集長は独り言のように「ウラジオストクでは、パイプラインも整備されたし、素晴らしい橋も建設された。でも、これは誰のために建てたの?」と聞いた。