米政府の対応
事態がどの程度重大なのかを
わかりやすく伝えられるかどうかがカギ
メディアはともかく、米政府、特にアジア情勢や核不拡散を扱う部署は、北朝鮮が「衛星打ち上げ実験」の意図を発表したときから、大きな関心をもって事態を見守っていた。日米韓は軍当局同士(今春の日韓軍事秘密保護協定締結失敗により、日本と韓国は直接情報のやり取りができないため、米国を介してのやり取りとなったと思われる)はもちろん、外交当局の間でも密接な連絡が取られていたようだ。
それでも、北朝鮮があの時点で実験を強行したことは、かなりの驚きを以て受け止められた。北朝鮮が打ち上げ期間を当初の22日から29日まで延長した後、日米韓3カ国の間には「打ち上げ期間の延長はしたが、北朝鮮は実質、実験をあきらめて中止する見込みだ」という情報がかけめぐったこともあったという。それでなくても、北朝鮮の冬は気温が低く、天気が悪い日が多く、ミサイル打ち上げ実験には不向きな季節であると一般的に考えられている。なので、ミサイル実験が中止されても全くおかしくはなかった。
しかし、ふたを開けてみれば北朝鮮は打ち上げ予告期間開始からわずか4日後に実験を実施し、曲がりなりにも「衛星」を軌道に乗せることにも成功してしまった。実験前にこの件について話を聞く機会があった米政府関係者はいずれも、「実験が成功すると、これは米国にとって重大な問題になる」と言っていたが、はからずも、彼らの懸念が的中してしまった形となった。
しかも、事前情報に振り回され、実験実施に向けた作業が進んでいることを探知できなかった。今回の一件は、これまでの北朝鮮の動向に関する情報収集のあり方(ヒューミント(人的情報)が十分とれていたか、衛星情報や電波情報で見逃していた兆候はなかったのか、など)を見直す契機になるのではないかと指摘する人もいる。
「ならず者国家」間で情報交換か
そして今回、ミサイル実験を北朝鮮が強行し、成功させたことは米国にとってどのような意味を持つのだろうか。
ある元米政府元関係者は、北朝鮮による12日朝の実験の影響について問われ、「今回の実験の『成功』の最大の意味は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を打つ能力を着実に得つつあるということ、つまり、米国本土を攻撃できる能力を身に着けつつあることが証明されたということ」だと答えた。