日本時間の4月13日朝(米国東部夏時間4月12日夜)、北朝鮮は予告どおり「人工衛星」打ち上げを実施した。ロケットは1分ほど飛翔したところで空中分解、実験そのものは失敗した。打ち上げ成功を国際的にPRしようと、海外メディアを地上管制室に招待したが、実験が失敗したことで、裏目に出た形だ。
オバマ政権の面子丸つぶれ
打ち上げ失敗により、6者協議を中心とした北朝鮮に核兵器プログラムを手放させるための外交交渉には、大きな暗雲が立ち込めることとなった。
2月29日、北朝鮮が核実験、寧辺の核施設でのウラン濃縮活動、長距離弾道ミサイル発射を一時凍結し、ウラン濃縮活動をめぐるIAEAによる監視を受け入れることを条件に北朝鮮国民への食糧支援を行う合意に踏み切ったオバマ政権の面子は、大統領選挙前という重要な時期に、丸つぶれになった。大統領選挙ではたいていの場合、外交問題は争点にはならない。しかし、今回の米朝合意がわずか2週間余りで崩壊してしまったことで、オバマ政権に対する「弱腰外交」批判が巻き起こる可能性がある。加えて、これまで安保・外交問題でオバマ政権を批判できなかった共和党陣営に格好の攻撃材料を与えてしまった。
オバマ政権としては、すくなくとも大統領選挙後までは、北朝鮮に対する関与に再び前向きな姿勢は見せられないことになる。今回の実験により、米国内では北朝鮮の核問題は実質、少なくとも今後7~8カ月は、何の進展も見込めないことになった。
疑問符ついた金正恩の指導力
北朝鮮では衛星実験を強行し、失敗したことで、金正恩の最高指導者としての能力に疑問符がついた。金日成生誕100周年記念行事の幕開けを「人工衛星」打ち上げ実験の成功で華々しく飾るはずだったが、失敗に終わったことで祝賀ムードに水を差した。
また、米国との関係では2月29日の米朝合意をあっさり反古にしたことで、金正恩下の北朝鮮が米国に対していくらか持っていたであろう外交交渉上のレバレッジもほとんど失われた。国連安全保障理事会で自国の立場を常に弁護し「冷静な対応」を求めてくれる中国やロシアとの関係もさらに微妙なものになった。
既に北朝鮮内では金正恩体制以降後、軍や党の幹部の粛清が始まっていると言われていた。今回の打ち上げ実験失敗の責任を取って粛清される幹部が出てくるであろうことは、既に指摘されている。
追い詰められた中国 核実験でも力は及ばずか
中国にとっても事態は深刻だ。再び国際社会で北朝鮮を弁護せざるを得ない立場に追い込まれ、北朝鮮への対応を巡り米国との関係が再び緊張することになった。