2024年5月2日(木)

安保激変

2012年4月16日

 北朝鮮に対して強硬な姿勢に転じられない状況が長引くにつれ、6者協議主催国としても面目も無くなっていく。ワシントンの専門家の間では「中国は過去何年間も、北朝鮮に対して甘く接してきた結果をよく直視する必要があるだろう」と指摘される一方で、「北朝鮮を締め付けすぎることで体制崩壊を招くことを中国は恐れており、北朝鮮が核実験の強行を決めた場合、中国ができることはほとんどない」とも見られている。

3度目の核実験で一発逆転を狙う?

 関係国間での目下の最大の懸念は「人工衛星」打ち上げ失敗で面子の回復を焦る北朝鮮が3度目の核実験に踏み切るのではないかということだ。

 今回の打ち上げ失敗でミソがついた金正恩体制の足固めを急ぐためにも、何らかの軍事的な措置を成功させる必要が今の北朝鮮政府にはある。大陸間弾道ミサイル打ち上げ能力に繋がる今回の実験が失敗したため、短距離ミサイルの発射実験をしてもインパクトは薄い。そこで、一発逆転を狙い3度目の核実験をするのではないか、というのが米政府でかつて北朝鮮との2国間協議にさまざまな形で関与してきた人々の共通の懸念事項であるようだ。

主要プレーヤーとみなされない日本

 日本が憂うべきは、米国メディアの報道などで今回の実験が日本に与えるリスクについてほとんど論じられている気配がないことだ。13日以降、本件に関して報道されている専門家の論説・解説の主たるものは「今回の実験失敗が金正恩指導体制に与える影響」、「今回のミサイル実験が米中関係に与える影響」或いは「ミサイル打ち上げがなぜ中国にとって良くないのか」というものばかりだ。

 つまり、北朝鮮の核・ミサイル問題について「日本は主要プレーヤーとみなされていないも同然」、ということになる。

重要な米軍のプレゼンス

 無理もない。日米間ではここ数年、外交と安保の当局者が両方とも集う2国間協議の場では沖縄の米軍再編問題しか、まともに議論されていないからである。「日米同盟=米軍再編ではない」という議論も外交当局者の間からは聞こえてくる。

 しかし米国の、特に国防当局者側に言わせれば、沖縄の米軍再編問題は、東アジアに展開する海兵隊の将来像を決定する上で極めて重要な問題だ。

 台湾有事や朝鮮半島有事の際の主力は海軍と空軍になると言われて久しいが、それでも、中国や北朝鮮から目に見えるところに海兵隊部隊が駐留することで中国や北朝鮮に対して一定の心理的プレッシャーを与えることはできる。この「目に見える米軍のプレゼンス」の将来像が固まらないうちは、より踏み込んだ同盟に関する協議などできるわけがない、というのが米国防当局者の本音だろう。

外交カードを切れない日本

 更に北朝鮮問題に関しては、日本は「拉致問題」という国内的に非常に難しい問題を抱えているため、硬軟織り交ぜた戦術を取りにくい環境にある。拉致問題は日本にとっても重要な問題であり、被害者やそのご家族の気持ちを考えれば、今後も解決に向けて日本政府が全力を挙げなければいけないことは言うまでもない。


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