2024年4月26日(金)

安保激変

2012年12月25日

 この元関係者によれば、北朝鮮自身がその能力を身に着けつつあるということも十分な脅威なのだが、今年の4月、北朝鮮は同様の実験に一度失敗したにもかかわらず、そこから1年も経たずに今回の実験を成功させたことが重要なのだという。つまり、北朝鮮とイランやパキスタンなど、いわゆる「ならず者国家」の間での核・ミサイルに関する技術や情報の交換が行われ、そのことが北朝鮮が持つ技術の急速な進歩に貢献したことの証左で、拡散のリスクを考えると、こちらの方がはるかに大きな脅威にとなるというのだ。したがって、ともすれば中東情勢に目を奪われがちな米政府中枢に「北朝鮮は米国にとって重大な安全保障上の懸念事項である」というメッセージを如何に伝え、そのような認識を如何に政権内で浸透させることができるかがカギになるというわけだ。

「No Good Option 」の苦悩

 そうはいっても、1992年から1993年にかけて、北朝鮮の核兵器不拡散条約(NPT)脱退に端を発して生じた、第一回の北朝鮮の核兵器プログラムを巡る危機以来、北朝鮮問題への対応には「良いオプションがない」ことも、良く知られている。対北朝鮮武力攻撃が韓国からの強い反発が予想されることで、実質的に政策オプションとして機能しないという状況下で追及できる政策の選択肢は、それほど多くない。そのような中、現在、米国のアジア専門家たちの間では、今後の政策アプローチのオプションについて、大体以下の3つの考え方に大別されるようだ。

 第一グループ:米国主導で、さらなる実験の凍結と、履行の検証が可能な不拡散合意を目指した新たな外交努力なしには、今後も北朝鮮の(核・ミサイル)能力をみすみす進化させてしまうリスクがある、と懸念するグループ。

 第二グループ:金(正恩)体制が核兵器を放棄することは決してなく、交渉しても有益な結果は生まないという考えに立ち、「放っておけばいい」と考えるグループ。ただし、この考え方は、北朝鮮による挑発行為が続くことで、報復行為がエスカレートすることはない、という前提に立ったもの。

 第三グループ:1994年枠組み合意からも明らかなように、安全保障上の確証、国際社会からの尊敬、援助物資などについて交渉できれば、核兵器プログラムに関する合意は可能だとする考え方。

 上記3つのグループのうち、第一グループと第三グループは非常に立場が似ているが、1994年の米朝枠組み合意に対する見方が前者と後者では微妙に異なる(第一グループの方は枠組み合意に対して若干、否定的な印象だ)。また、第2グループにはブッシュ政権時に幅を利かせていた強硬派、所謂「ネオ・コン」として知られる人々が含まれているようである。


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