2024年4月20日(土)

ベテラン経済記者の眼

2012年12月28日

 貿易立国、技術立国たる日本を支えてきた電機メーカーの苦境は、筆者個人には、ある意味で、「これまでの取材の常識や発想を根本から変えないといけないぞ」、という警告として迫ってきた。長く経済記者をやっていると、大手企業は好不調の波はあるものの、一定の業績をあげてあたりまえ、という発想になりがちだ。しかし、気づいたら韓国や中国が追い上げで、日本企業は苦境に陥り、大企業の屋台骨を揺るがし、日本という国はかつての指導的な地位からすべり落ちようとしている。日本はこれからどうやって稼いでゆけばよいのかという根本的な問題が突きつけられている。

 こうした大きなパラダイムシフト(枠組みの大転換)ともいえる状況をどう的確に捉えられるかが取材記者の腕の見せ所だ。しかしそれをきちんと見抜けたか、と問われると自分でもなかなか難しい判断ではあったと反省点も多い。

2013年はどうなるか

 9月以降は尖閣諸島の国有化をめぐる日本と中国の関係悪化で、中国への輸出減少や現地生産の縮小などもクローズアップされた。多くの企業が東日本大震災の影響からようやく立ち直ろうとしていた矢先に中国との関係が悪化して、経済にも大きな影響が出たのは残念というしかないが、ひとたびこうしたことが起きると正常化するまでには時間がかかる。そしていま、1年間を通じた円高と、それを是正するために、日本銀行の金融政策はどうあるべきかという議論が続いている。

 眼を海外に転じてみれば、こちらも様々な動きがあり、日本に深く関係するニュースが多かった。3月に中国が経済成長目標を7.5%に引き下げ、夏の欧州危機再燃、9月の米連邦準備制度理事会(FRB)のQE3(金融緩和第3弾)を表明などだ。一言でいえば中国の成長鈍化、欧州財政危機、米国の景気動向に翻弄された年だった。

 2013年はどうなるか。日米両国でいえば、第2次安倍内閣の本格始動、オバマ大統領の2期目のスタートなど新たな政治の動きが始まる。両国とも財政再建が喫緊の課題になるなか、政治の決断がどう経済にかかわってくるかが注目点だろう。これに中国やアジア、欧州の問題が加わる。変数の多い、複雑な方程式を読み解くような作業だ。日本経済、世界経済は当面、一進一退が続くのであろうが、全体として回復に向かってゆくことを願わずにはいられない。

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