ハイブリッド戦争の一環として行われる情報戦は、社会の分断や政府機関の信用失墜など、情報操作によって社会を攪乱し、弱体化させることを目的としている。先述したクリミア危機におけるロシアの作戦は、結果的に住民投票に影響を与え、戦うことなくクリミア半島の併合に成功したのだった。
ハイブリッド戦争をお家芸にするのはロシアだけではない。「不戦屈敵(戦わずして勝つ)」の孫子の考えを重視する中国もまた、情報戦を主戦場と考えている国の一つである。
中国人民解放軍政治工作条例では、「輿論戦、心理戦、法律戦(編集部注:これらを合わせて「三戦」ともいう)を実施し、瓦解工作(中略)を展開する」と定められている。17年以降の中国では「制脳権」という言葉がもてはやされ、認知領域の戦いでの勝利も重視されるようになってきている。
デュアルユースのサイバー技術
平時から忍び寄る〝魔の手〟
ハイブリッド戦争が想定される中、日本の近隣国では、サイバー戦能力の増強が着々と進んでいる。日本では今年9月、新たな「サイバーセキュリティ戦略」が閣議決定された。そこでは、
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